神曲短編集

□あなたとともに。
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「……はい」

風船の紐を子供に渡す。
子供は先ほどまで泣きそうな顔をしてたのに、凄く明るく笑って、

「ありがとうおにいちゃんっ」

風船を手に俺にペコリと頭を下げて、何処かへ走っていってしまった。
それを見送り、隣の彼を見ると、彼も優しく笑っていた。

「黒鷹、えらいっ」

に、と笑って、俺の頭を撫でてくれた。うれしい。うれしい。もっと撫でて、リューヤ。

「子供、可愛かったな」
「うん」

可愛かったね。
俺もようやくそう思えるようになったよ。
あの子は爆発しない。わかったよ。
子供はとっても可愛い。
子供を爆弾にしたのは、わるいおとな。

「リューヤ」
「ん?」
「たいせつにしたいね」
「……何を?」
「…たくさん。それから…」

俺が一番、大切なのは。


「リューヤとの、時間」


少しだけ、自分の口元が和らいだのが。わかった。
ねぇ、リューヤ。
もっともっと、おしえてよ。


「だいすきだよ」


言葉も、感情も。
それをどうやって表現したら良いのかも。



「キスしても、いい?」



たくさん、たくさん。







あなたといっしょに、おぼえていきたいです。

***
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