こばなし

□〜無題〜こ話※アルエド※
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「…兄さん」

アルとお揃いのバスローブに初めて袖を通し、まだ僅かに水を滴らせた髪のまま浴室から出る。と、先に入浴を済ませていたアルがタオルを片手に近付いて来た。
サイズこそ違うけれど、揃いのバスローブを着ているアルの、スラリと伸びた手足にそれはとてもよく似合っている。
俺は俺の見立てに満足した。

「こっちへ、…兄さん」

そんなアルは、器用に俺の髪をタオルへとくるみこみ、手を取ってソファーへと促した。
ソファーの背もたれに、俺の濡れた髪とタオルとを広げ、アルがドライヤーのスイッチを入れた。

自分で出来る事をアルにしてもらうのは照れくさいが、こいつと恋人になってからというもの、以前以上に俺の世話を焼きたがるのだからアルを好きな俺としては断る理由もない。
柔らかく触れてくるアルの指先の動きを目を閉じて追う。
ドライヤーの無粋な送風音でさえ気にもならず、俺は心地良さにゆっくりと背もたれに頭を預けた。
見上げた先にアルのいたずらそうな瞳。何かを囁いているけれど、

…ドライヤーの音で聞こえないよアル。

俺の唇の動きを読んだのか、ドライヤーのスイッチを見もせずに器用に切り、アルは俺に身を乗り出してきた。アルのまだ細い首筋が、バスローブの襟元から覗く鎖骨が、逆さに目に飛び込む。

そっと啄まれた唇から細波が身体に走った。思わず顎を退くと、満面の笑みを浮かべたアルが俺に頬を寄せてきた。

「キスしていい?って聞いたら、兄さんがいいって言った。」

…嘘だろそれ…。

耳元で囁かれて、俺の頬が火照る。まだこういう事に照れがある俺は、アルにはあまり隙を見せない。それを知っているから、アルも無理強いはしてこない。
でも、こいつはこんな風に上手に俺を解かし、溶かしていく。
もう一度、背を丸め俺に乗り出して来たアルの頬に手を添える。

「…正々堂々と来い。」

目を見開いたアルが可愛いかった。
ソファーをひらり、と越え、アルは俺の前に降り立つ。
蜂蜜色の瞳が、満面の笑みが喜びを伝えてくる。

「兄さん…」

呼ばれて、俺はその手を取った。




企み成功vみたいな笑顔の光里ちゃんのアル君が、兄さんのバスローブを寛げさせているので、うっかり書き始めたSSです。
続き錬成しました。→
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