ポケモン小説
□遠い笑顔
2ページ/3ページ
「ハーリー・・」
「もう・・心配したのよ?突然、ノクタスちゃんが倒れるから―」
名前を言うと、ハーリーは子の心配をする母親のように呟いた。
「なにが、あったんだっけ・・・あ・・そうか・・」
考えながら呟いていくと、段々思い出してきた。
確か。
身体がだるくて、頭もガンガン痛んで、段々わけがわからなくなっていった。
意識が、薄れていって、俺はその場に倒れ、気を失った。
「思い出した?」
俺の心でも読んでいるのか、丁度思い出した頃に、ハーリーが尋ねてきた。
「なんとかな・・」
見回せば、確かにここはポケモンセンターで、俺は、今ベッドに寝かされていた。
俺の横たえるベッドの傍らに、ハーリーの姿を確認する。
「・・・で、ノクタスちゃん、お熱があるんですって、だから暫く、ここで静かにしていないと」
おそらくジョーイさんから聞いたのか、ハーリーはそんな口調で、俺の安静を命じる。
「でも、コンテスト・・・」
今いる、この町で、コンテストが行われる。
俺も、それに出なければ。
「コンテストは他の子で出場するわ。ノクタスちゃんは、今はゆっくり身体を休めて、ね」
「・・・・・・」
「それじゃ、あたしはジョーイさんにお話を聞かないといけないから、ノクタスちゃんは、ここでゆっくり休んでてね」
まるで子供に言い聞かせるような口振りで、ハーリーが告げる。
「・・あぁ、分かった」
答えて、俺は寝返りを打った。すると額に乗っていたタオルが落ちてしまう。
仕方なく、俺はタオルを額に乗せ、元の体勢に戻った。
背中が痺れるように痛んだ。
ハーリーが、『早く元気になりましょうね』と言い残し、部屋を後にする。
途端、室内を包む、静寂と、虚無感。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どれくらい、経ったのか、皆目、見当もつかない。
俺の居る部屋には時計が設置されていないため、どれ位の時間が経過したのかが分からず、余計に時間を長く感じる。
誰もいない部屋に、一人。
取り残されて。眠り、夢に逃げることもできずに。
「・・・ハーリー・・・」
苦痛に耐えられず、俺はとうとう言葉を発した。
返事の返ってこない空間が辛い。
いつも傍にあった、あの笑顔が恋しくてたまらない。
らしくも、ない。
けど。
本当に
寂しくて仕方ない。
不安。
「・・・ハーリー・・・」
胸元に被さる布団を引き上げ、それで顔の鼻の辺りまで覆う。
「・・・・・・っ」
返ってくるはずの無い返事を待ち、俺は目を閉じた。
END...→後書き