ポケモン小説

□愛と毒
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「あいたぁあっ!!」
平穏な昼下がりは、ハーリーの悲痛な叫びによって割かれた。









愛と毒









「ハーリー!大丈夫か!?」
ノクタスが、慌ててハーリーに駆け寄った。
ハーリーはうずくまり、左手を右手で押さえていた。


事態は、深刻だった。
・・・かのように思えたが。


「いった〜い!どっこ狙ってたのヨ〜!」
涙目になりながら、ハーリーがノクタスに叫んだ。
叫ぶ元気はあるらしい。

「・・すまない・・」
それでも、ノクタスは心の底からしょげた様子で、ハーリーに頭を下げる。

「そうだっ早く毒を抜かないとっ」
思い出したようにハーリーがそう言って、自身の左手を見た。

そこには、黒く長い針が、ハーリーの左手に突き刺さっていた。
それは間違いなく、ノクタスが放ったものだった。


「・・じっとしてろ」
冷静に、ノクタスがハーリーに指示する。
ハーリーもそれに従い、大人しくした。

ノクタスがハーリーの左手を掬い上げ、針をまじまじと見詰めた。

「慎重に抜いて、それからすぐに毒を吸い出すか・・」
ぼそぼそと呟いて、ノクタスがハーリーの左手に刺さった針に手を掛ける。

そっと 慎重に。

その針を引き抜いていく。


事態は、ほんの少し前。
ハーリーが叫ぶ少し前に起こった。

人間化したノクタスは、人間になっても技を正確に打ち出せるよう、ハーリーの指示のもと、技の練習をしていた。

そして、慣れない人間の身体で放った毒針が、ハーリーの左手に当たってしまったのだ。



「・・・抜けた・・」
ノクタスが、数秒ぶりに呼吸を再開する。
集中するために、呼吸すら邪魔だった。

「じゃあ、毒を吸い出すか・・ハーリー、左手に口を付けてもいいか?」
抜き取った針を地面に放り、ノクタスはハーリーに尋ねた。
ハーリーは、まだ毒が回り始めていないらしく、その身体に異常は見られなかった。
しかし、もう毒は回り始めても可笑しくはない。
ノクタスの口調には焦りが見られた。

「・・恥ずかしいってぇっ」
「だが、ハーリーが自分で毒を吸い出して、間違えて飲み込んでしまっても危険だ。だから俺が吸う」
「でもノクタスちゃんが失敗して飲み込んじゃっても危な・・」
「俺は大丈夫だ。この毒の抗体は出来ている筈だから」
「でも・・飲み込んじゃったりしないようにね?」
ノクタスの説得に、ハーリーは小さく頷いて、そっと左手を差し出した。
ノクタスはその手を取り、まるで姫の手に口付けるかのように、その白い手に口を付けた。





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