最遊記ストック
□VSN
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「依存できないんじゃなかったっけ?」
「気休めにはなるから困るんだよ。」
季節の変わり目、環境が変化する頃には異常にムシャクシャする。他人に当たり散らす前にと思ってまたタバコを買った。
別に前回はやめようと思ってやめたわけじゃなくて、単に厭きただけ。だからまた始めたからって意志が弱いとかそういうわけじゃないんだけどな。なんだろこの挫折感は。
「ああだこうだ言いながら相変わらず1ミリだし。」
「パッケージ好きなんだよ。」
「うわ、女の子発言だなぁ。」
「女の子だもん。」
いつもの場所、いつもの木の下、傾き始めたおひさま、少しあたたかい空気、ゆるい風に、微かな草の音。中身のない会話は淡々と進んでいく。
煙草の煙を吐き出しながら、空を見上げた。いつもと同じ光景なはずなのに、なんか違った。烏哭はいつもみたいなペースで煙草を消化していた。あたしは前よりはちょっとだけ落ち着いた。なんかそれが、妙な距離感。
烏哭はタバコをやめてからしばらく来なくなった。でもまたあたしがタバコを始めて、2パック半くらいなくなった頃にひょっこり現れて、また毎日来るようになった。だけど前よりは近づきすぎない距離を保っているみたいで、こうして隣でひなたぼっこしながらタバコをふかしていても絶対に触れてきたりはしなかった。触れてこないどころか、あたしを見てすらいないんじゃないか。どっか、わかんないけど遠いとこばかり見ている気がした。
その、苦い唇にまた触れたいと思うのは只の欲求不満なんだろうか。
(嫌だなぁ、なんかあたしサカってる??)
前に抱かれた時、あたしは確かに烏哭に依存していると思っていた。だけどいざ烏哭が来なくなっても、こうして只"居る"だけでも、あたしが生きていけないことなど決してなかった。そりゃあ来なくなったとき数日間はそわそわしたけれど、一旦諦めたら心のどこかで待つだけで他には何も思わなかったし、まして情緒不安定を起こしたりはしなかった。でも今こうして、烏哭を目の前にしてしまうと、触れたいという欲望が頭から離れなくてドキドキしてしまう。