幽蔵メイン小説

□Pain
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蔵馬が帰ってこない。
黄泉に呼び出されたとかで、土日を利用して魔界に行ってくると言われたのは先週のこと。
幽助は特に止めることもなく、了承していた。
その間も屋台の仕事は休む事無く、朝方帰ったら寝ているだろうと思ったが、帰ってきた形跡もなかった。

――何かあったのか?

しばらく様子を見てはいたものの、いい加減幽助でもおかしいと気づく。
「くっそ……」
かけてあった上着を引っつかむと、幽助は急いで部屋を、出ようとした瞬間だった。
静かにたった物音に気づいて、寝室へと引き返す。
「飛影?」
夜の闇にまぎれるような黒い影を視線の先に認めて、その名を呼ぶ。
「奴はどうした?」
久しぶりの再会の挨拶をするでもなく、飛影は静かに問いを向ける。
奴というのは、間違いなく蔵馬だろう。
「……魔界に、いるはずだ」
「はず? どういうことだ?」
いつも確定で物事を説明する幽助。
でも、今は違う。
「魔界に行くって言ったまま、帰って来てねぇ」
「フン……どうりで奴の妖気を感じないはずだ」
相変わらずの様子の飛影に視線を向けたまま……それでも、二人の意思は同じだったようだ。
それでも、今回は自分の不注意。
「頼む、飛影」
一緒に探してくれ、と付け加えると、返事は無いまま飛影は来た道を引き返す。
はじかれたように幽助も窓から飛び出した。
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