幽蔵メイン小説

□ほんの一瞬だけ
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久しぶりに約束をした。
何をするわけではないけれど、久しぶりに会う、それだけ。
でも、何故か嬉しくて、その誘いを快く受け取った。
どうしてだろう?
他の人からの誘いは、正直どうでもいいと思ってしまうこともあるのに、幽助からの誘いだけは何を差し置いてでも守ろうとする。

――何だか、恋する乙女だな。

自分の中で呟いた言葉に「乙女」というものがあったのには自分でイラっとしたが。
「恋」という言葉にはあまり違和感を覚えなかった。

いつか、ぼたんから小さな呟きを聞いた。
「幽助も成長したもんだね。一度目に死んだ時は、友達一人すらいなかったのに」
何故、クラスメイト達は幽助の魅力に気づかなかったのだろう?
たまにそんな事を考える。
どれだけ喧嘩が強くても、どれだけ授業をサボっても、自分の命に代えてでも人を大切に思いやることができて、一人一人を尊重することができる人なのに。
ちょっぴり短気なところも、強くなりたいというひたむきなところも、愛らしいというのに。

「好き」だから、愛らしいのか?
「好き」って……LOVE、なのか?

――あぁ、でも。

彼の住む町の、彼の家の近くの空き地にさしかかった時、ふと足が止まった。
幽助の魅力に気づいた人もいるんだ。
桑原君や、可愛い……彼女……
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