幽蔵メイン小説

□メロン記念日
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「幽助、メロンって好きです?」
携帯ごし。彼の声を確認すると共に、蔵馬は静かに問いかける。
彼の目の前には、夕張メロンと書かれた大きなダンボール。
ため息まじりにそれを眺めると、あ?と疑問をもつ幽助の返事を待つ。
『好きだけど…まぁ、好きっていう程食ったことも無いけどな』
ケラケラと笑う幽助の声に、なんだか今、彼が目の前にいるんじゃないかと疑問になる感覚を覚える。
「率直に言いますけど。今夜うちに食べにきません? 母さんが送ってきたんですけど…とても一人で食べきれる量じゃないんで」
『りょーかい! んじゃ、お礼に夕飯作ってやるよ』
「ありがとう。ラーメン以外でお願いします」
『ラーメン以外の料理も作れますー。馬鹿にしてるの、蔵馬君?」
クスッと笑いながら、冗談です、と返すと、そのまま今夜の約束をとりつけた。

母さんの実家は北海道。
こっちに来てからも、毎年メロンだけは電話注文していた。
今年は畑中家となり初めての年。
いつもより多くのメロンを注文するのか、とは思っていたが、まさか一人暮らしをはじめた自分の家に5つものメロンを送ってくるとは思っていなかった。
メロン自体は嫌いではない。むしろ好きな方ではあるが、全て食べてしまうには時間がかかる…というか、食べきる前に熟れきってしまう。
「全く…母さんもどんなつもりなんだ…」
ぼそっとつぶやきながら、蔵馬は箱から二つのメロンを取り出すと冷蔵庫へと持って行った。
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