小説

□デートの最中溜息などしてはいけない
1ページ/7ページ

巡回中に少女に腕を掴まれた。

少女はなんて事無いように、けれど衝撃的な言葉をその小さな口から発した。



「明日、私とデートするヨロシ」
「………はぁ?」




何を思ってそんな事を言うのか知らないが、冗談じゃない。
何故自分がこんな青臭いガキを相手しなきゃならないのだ。

「おい………」
「お前に拒否権は無いアル。夕方五時に○○公園に待ち合わせ。忘れるなヨ〜」

神楽は手をひらひらと振って踵を返した。
土方はその後ろ姿に慌てて声を張り上げた。

「意味分かんねぇ、行かねぇぞ!?」

けれど神楽はそれを無視して立ち去ってしまった。
しばらく茫然とその場に立ち尽くし、頭の中では先ほどの神楽の言葉が何度も繰り返されている。

……デート?
誰と、誰が?




………俺と、チャイナが?




なんでよりによってこの組み合わせ?
一緒に歩くだけでも結構危うい線だというのに。

「最近のガキは盛ってますねぇ」
一緒にいた沖田がニヤニヤしながら土方を見た。
睨み返すと沖田は苦笑して神楽が去っていった方を見つめて、
「それにしても、なんで五時なんですかねィ?」
と、首を傾げた。
確かに、沖田の言う通りだ。
なんでそんな遅い時間に“デート”なんだろう。
普通なら、昼頃を狙うものではないのか?
それとも、最近はそういうのが流行しているのだろうか。

「あ、分かったかも」

沖田が目をキラキラさせて顔を上げた。土方は顔を顰めて次の言葉を促す。
沖田はそれに対し、意味ありげに口端を吊り上げて顎をさすり、囁いた。




「ラブホですよ、きっと」

「………お前、もう黙れよ」

とんでもなく頭の悪い発言に溜息を吐き、沖田に背を向けその場を後にした。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ