小説
□デートの最中溜息などしてはいけない
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巡回中に少女に腕を掴まれた。
少女はなんて事無いように、けれど衝撃的な言葉をその小さな口から発した。
「明日、私とデートするヨロシ」
「………はぁ?」
何を思ってそんな事を言うのか知らないが、冗談じゃない。
何故自分がこんな青臭いガキを相手しなきゃならないのだ。
「おい………」
「お前に拒否権は無いアル。夕方五時に○○公園に待ち合わせ。忘れるなヨ〜」
神楽は手をひらひらと振って踵を返した。
土方はその後ろ姿に慌てて声を張り上げた。
「意味分かんねぇ、行かねぇぞ!?」
けれど神楽はそれを無視して立ち去ってしまった。
しばらく茫然とその場に立ち尽くし、頭の中では先ほどの神楽の言葉が何度も繰り返されている。
……デート?
誰と、誰が?
………俺と、チャイナが?
なんでよりによってこの組み合わせ?
一緒に歩くだけでも結構危うい線だというのに。
「最近のガキは盛ってますねぇ」
一緒にいた沖田がニヤニヤしながら土方を見た。
睨み返すと沖田は苦笑して神楽が去っていった方を見つめて、
「それにしても、なんで五時なんですかねィ?」
と、首を傾げた。
確かに、沖田の言う通りだ。
なんでそんな遅い時間に“デート”なんだろう。
普通なら、昼頃を狙うものではないのか?
それとも、最近はそういうのが流行しているのだろうか。
「あ、分かったかも」
沖田が目をキラキラさせて顔を上げた。土方は顔を顰めて次の言葉を促す。
沖田はそれに対し、意味ありげに口端を吊り上げて顎をさすり、囁いた。
「ラブホですよ、きっと」
「………お前、もう黙れよ」
とんでもなく頭の悪い発言に溜息を吐き、沖田に背を向けその場を後にした。
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