小説
□兄妹だからといって似てるとは限らない
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雨か――…
阿伏兎は唐突に呟いた。
別に意味があって声に出した訳ではない。
だがそれは静かだった路地でやけに大きく響いた気がする。
ポチャッ、ポチャッ――…
傘は雨が降る前からずっと差していた。
小降りの雨粒が弱々しく傘を打つ。
阿伏兎はため息を吐いた。雨が不快だからではない。
“ビジネス”でまた地球に来たものの、上司の神威とはぐれてしまった。
放っておいたら何をしでかすか分からない。
「…何処うろついてんだ、あのすっとこどっこい………」
軽く悪態を吐き、荒々しく歩き始めた。
――ドンッ
曲がり角で小さな少女が自分とぶつかり、少女は軽くよろけた。