小説

□サディストになり切るのは難しい
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「……いらないんじゃなかったのか?」
阿伏兎は苦笑した。

自分でも意味不明だった。

神楽は耐え切れずに俯いた。


「ほら」
彼は袋ごと飴を神楽に渡した。
神楽はそれを無言で受け取る。けれどすぐ開けはしなかった。
それを見て阿伏兎は「素直じゃねぇなぁ」と笑った。
その時、強い風が吹いた。神楽は反射的に目を瞑った。
その風はすぐに止み、神楽は乱れた髪を直した。

そこで阿伏兎が思い出したかのように言う。

「そういやぁ、お前さんはそういう露出の高い格好がお好みなのかね」



「…………………はぁ?」


神楽は思わず頓狂な声を出した。

「吉原の時もそうだったが、さっきから見えそうで見えねぇんだよな」




何が?なんて訊く必要も無かった。


神楽は容赦無く拳に力を籠める。


バンッ
小気味の良い音が鳴った。

けれど彼は神楽の拳を難なく受けとめ、自分の方に引き寄せた。




ガリッ




「………っ!」



神楽は身体を強ばらせた。



阿伏兎は神楽の鎖骨に思い切り噛み付いていた。


コンクリートの壁にそのまま押さえつけられた。
神楽はぎょっと目を見開く。
阿伏兎は徐々に力を入れた。
「やめっ………いた…ぃ…」

血が出ているのがわかった。
阿伏兎はようやく神楽を解放する。


神楽は彼を避けるように後退り、傷を押さえてキッと睨みつけた。
それでも男はニヤニヤしながら神楽を見下ろした。







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