小説

□サディストになり切るのは難しい
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「にしても地球人はつまらんな。あの程度でくたばっちまうんだ、団長が見てたらなんて言うか……
なぁ妹さん?」

「おちょくってんのか」
神楽は知らず、立ち上がって番傘の銃口を阿伏兎に向けていた。「おぉっと?」とおどけるように彼は後ずさる。
彼はただ自分に同意を求めただけだ。けれど妙に癪に触った。
何故兄妹という関係だけで、いつも並べられなくてはいけないのだ。


「あんな奴の事なんて知らないアル」
「…………」
阿伏兎は先程とは打って変わって、無表情に神楽を見下ろした。

気分が悪い。
胸にざわざわとした痛みを感じる。寒気も酷かった。

「………血の匂いに酔ったか」

阿伏兎は神楽の顔色を伺った。よっぽど酷い顔をしていたのだろう。

神楽はそう自覚した瞬間、胃がひっくり返ったかのように猛烈な吐き気が襲った。
「うっ……」
思わず阿伏兎に背を向け、しゃがみ込む。

そして、神楽は胃の内容物をそこに吐いた。

「おい、大丈夫か?」
阿伏兎は気遣うように神楽の背中をさする。
神楽は一瞬その行動に心地良さを感じ、そんな自分が悔しく、恥ずかしくてならなかった。
「ゲホッ……ぅあ……」
生理的な涙がこぼれる。
胃の中が空っぽになっても吐き気は止まらなかった。

「……場所移動するか」

阿伏兎はいきなり神楽を軽々と担ぎ上げた。
「なっ……わっ!」
神楽は目を見開き、抵抗したが阿伏兎はそれを無視して足を進めた。






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