TOV
□短編
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ゴパンでゴハン
フレリタユリ
もぐもぐと動く口を、椅子の背もたれに手とアゴを乗せて、ジッと見つめる。だんだん眉間にシワが寄っていく。そろそろマズいか、と体を起こした。 部屋に充満するパンの香りに、次が焼けたかとキッチンの方を見る。
「フレン、どうだ?」
「焼けたよー」
焼き担当のフレンがパンを手に顔を出す。
「ん」
彼女は頬張ったまま、開いている方の手を出して、フレンを呼ぶ。苦笑しながら、彼はリタにパンを手渡す。
「熱いから気をつけて」
「んぐ」
返事もそこそこに眺めていたユーリを見る。なんだ、と首を傾げる。
無言で見続けるリタに、再度問おうと口を開きかける。
「はい」
と、フレンがリタにコップを渡す。音を立てて飲み干し、息を吐き出す。
「オヤジか、お前」
「うっさい。なんでわかんないのよ。あんた兄貴でしょ?」
文句を言いながら、焼きたてのパンを千切って口に放り込んでいく。その間、空になったコップにフレンは飲み物を注いでいく。
「兄貴でもわからないことはある。つか。幼なじみでよくわかったな」
「まぁ、リタのことだし」
ユーリも飲むだろう、とペットボトルを置き、キッチンへ消える。消えたのを確認して、リタの方へ身を乗り出す。
「で?」
「ん?そうね…」
見た目はフレンに任せたし、中身は自分が担当した。そこらのパン屋には負けない自信がある。違いを比べやすいだろう。
構えているがうんちくを並べ始め、結論を言わない。
「で?」
「だから…あ」
「あ?」
「どうしたの?」
2人分のコップと皿に載せたパンをフレンはテーブルに置く。椅子を引いて、リタを見ながら腰掛ける。
「2人はいくつになっても仲良しだね」
「はぁ?冗談じゃないわ。なーんであたしが?」
「文句あんなら、食べ比べ参加すんなよな」
今日はパンの食べ比べをするために、ユーリとフレンは約束をしていた。巷で噂のあのパンと普通のパンの食べ比べだ。
材料を買いに行きがてらフレンを拾ってこようと支度をしていたら、スーパーに行くならついでに買ってこいと言われ、あまりの量に同行しろと行った。荷物は持ってやるのだから、行く気が合ればいいのだ。本当に必要であれば、ついてくるだろう、と。
渋々ついてきたリタは、スーパーについてすぐ態度が変わった。わかりやすい、と肩をすくめたら足を蹴られた。
そして、気が付いたら食べ比べにリタも参加していたわけだ。食べる担当だが。
「どうだった?」
優しく問いかけるフレンにリタは緊張気味に答える。
「う、うん。そうね。いいんじゃない?」
わかりやすいにも程があるだろうと、パンを取りながらこっそりため息を吐く。案の定、足を蹴られた。
「お前…」
「ユーリ、どうかした?」
「いや、別に」
パンにかぶりつく。
ユーリをほったらかし、会話を続ける2人を眺める。
ユーリとの会話より緊張はしているが、饒舌なリタ。
学校にいる時より優しく見えるフレン。
今は望み薄だろうが、この先はわからないな。
フレンの鈍感を何とかしなければならないが。
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嵐を出せー!
テツコの部屋を見ております(* ̄m ̄)グゥー
2011/04/27