三つ巴

□1.オレのために死ね。
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1.オレのために死ね。

「ボクです」
「オレだ」
「…」
 同じ年頃のエクソシストが、一箇所に集まってなにやら軽い言い争いをしていた。いつもならすぐに力技へ入るアレンと神田が今日は口だけで戦っている。一体何事かと周りは興味を示して、話が辛うじて聞こえ、尚且つ、いつでも逃げ出せる距離で聞き耳を立てていた。
 そこへ通りかかったリナリーが、1人置いてけぼりを食っているように見えるラビに声をかけた。
「どうかしたの?」
「…まぁ、そのなんだろうね、うん」
「…?」
「簡単に言うとオレの取り合い?」
「え?」
 ラビを取り合ってどうするのだろうか。
 最近は2人揃ってラビがうざいと言っては逃げ回っているというのに、今日に限って取り合いとは一体。
「取り合いの原因は何?」
「非常に言いづらいんだけどさー…」
 ラビはごにょごにょとはっきり喋らない。そんなにいいづらい内容なのだろうか。首を傾げるリナリーを見てアレンが言う。
「リナリーは駄目ですよ」
「え、わたしは駄目なの?」
「はい。ラビはボクのものです」
「いや、オレのもんだ」
 この会話だけを聞いているととても妖しい。2人、いや3人?は、巷で噂の同性愛者だったのだろうか。
「リナリー…。お願いさ。オレをダークブーツで連れてっ」
 泣きべそをかきながらリナリーにすがりつくラビを、2人は同時に駄目だと言って引き離した。
 その手を外さず、2人はラビの頭上で火花を散らす。
「…なんなら今ここで」
「そうですね」
 刃物がぶつかり合う音がしてラビは、短い悲鳴を上げた。
「オレのために死ね」
「ボクのために死ね」
 真っ黒な2人が縮こまるラビに襲い掛かる。それを見てその場にいたものは納得した。
 ああ、八つ当たりか、と。
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