長編小説 瞑月
□四話
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瞑月
4
じっと目を細め、青い星を見つめるパンサー。その顔は、自信に満ちている。
「今コーネリア軍は昼間だから新人の訓練中だぜ。前に大声上げて追っかけてきたビル・グレイが教官やってる」
「えっ!?ナウス!軍のスケジュール見せて!?」
「ハイ。パンサーノ言ウ通リ、8時カラ新人ノ防衛訓練ヲ行ッテマス。」
見事に的中した。スリッピーは素直に誉めるが、ファルコは逆。
「ハハン、どうだい俺の能力!かっこよくない?」
「信じられっかよ!どうせ確認してやがったんだろ?クリスタル、テレパシーだ!サウリアの恐竜が今何をしてるか!」
「当たり前よっ!こんな男になんて負けたくないもの!」
「強がりも可愛いねぇ…」
クリスタルは目を閉じ手を合わせ、パンサーは目を細め遠くにある惑星サウリアを見た。
「アソーカ族が材木運んでる。祭りでもやるのかね?」
「楽しそうな声が聞こえる…って、嘘っ!?何で貴方が先に!?」
先に答えたのはパンサーだった。クリスタルも驚きを隠せない。
「何て能力だ…そんなとこまで…」
「はぁ…屈辱…。」
「はははっ!あとはレオンな。」
無言で小さいコラムの載ったページを見せる。
「千里眼。何つも離れた場所さえも見える化け物の目玉」
「集中すればしっかり見えちゃうぜ。だから死にそうなお前らに気付けた。いやあ、凄く得したね」
「いっつもウルフ達に助けられてるなぁーオイラたち…。ところで、ずっと当のウルフが俯いてぼーっとしてるけど…どしたの?」
いつもなら真っ先に憎まれ口を叩くウルフが、一言も喋らない。何があったのだろうか。気持ち悪い位に彼らしくない。
「あー…、何か月にいったきりあのままでさ。どろどろに呑まれたのかの影響か、俺の事シカトするし」
「パンサーの無視はは何時もの事。変わったことなどわからん。短気な奴が、精々ナイフで尾を切ろうが無反応になったこと位だ」
「それは重大だなオイ!!!誰でも痛み訴えるぞ!!!」
「冗談だファルコ。尾の先の毛だ」
レオンならやりかねない。その間、ウルフの後頭部を見てスリッピーが思い出す。
月でみた、灰色の頭。
気になって仕方がないので、ウルフに近付き恐る恐る尋ねていた。
「ね、ねえウルフ……」
「…。」
「つつつ、月に…その…」
「…んだよカエル」
「わああっ!」
低い声が静かに響く。予期しなかった事態にスリッピーは飛び上がった。
だが何処か、力ない。
「その、あの、」
「…早く要件言いやがれ」
「うへへっ…その、さ!
月に立ったりなんかしないよね!?オイラ達が居たときに!」
耳がピクンと動いた。
そして突然勢いよく体を向け立ち怒鳴る。
「そいつを月でみたのかッ!!」
「う、う、う…ん…」
「チッ…何を企んでやがる…」
「ウルフじゃないの?」
「当たり前だクソ蛙!」
「ぬっ…アホの次はクソかぁ!!!じゃあ誰なのさ!」
「アイツは俺の…っ…。」
まともな会話にもならず言葉につまるウルフ、おかしい。懲りたのか荒々しく手を放すと、ボスンと重い腰を椅子へ落とした。気まずくなり、そろそろとレオンの方へ戻る。
「何か…謎だね」
「ウルフにもたまには有るって。色々過去辛いのがベタだし?」
「さらっと言えるパンサーにはあんまりなさそうだね…。」
「おう、無いから言える〜」
「自由奔放にやってきたから今鼻つまみ者?」
「そんなあたり。こんなに宇宙は広いのにさあ、制限かける方が悪いんじゃねえの?」
「う、う〜ん…」
「どうせ秩序が無くなっては私達は悪で有り続ける事は出来ん。もうフィチナに到着した様だから、隠れ里にさっさと降りろ」
理屈っぽいレオンの一撃が二人を苦笑いさせた。得意の合口技の如く、前置き無しに物事の核心へ運ぶ性格が滲みでる。
だから彼と話をしていてもつまらない。
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