長編小説  瞑月

□三話
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瞑月

3






「いやぁ、運が良かったなぁ。まさかクリスタルに出会えるなんて。ハプニングの次にはラッキーがつきものだね」

ここはグレートフォックス。
安堵したペッピーとナウス、気絶したフォックス、クリスタル、スリッピー、気まずそうに座るファルコ。
此れで足りている筈だが、何故か三人頭数が増えていた。

スターウルフだ。

で、先程ニコニコとクリスタルに擦り寄っていたのはパンサー。レオンはナウスと調べ物をし、ウルフは出された茶を飲んでいた。

「わしらにも幸運だったぞパンサー。万が一来なかったら、奴等は宇宙空間に放られておったわい。すまんな」
「いやいや、礼はいらないぜペッピー。スターフォックスの父親なら、クリスタルの父親とも言えるからね…」
「本当にクリスタルが好きなんじゃな…」
「ははは、ご存知なんだな」

軽くお互い笑い通すと、ペッピーは険しい表情で気絶したフォックスに目を落とした。

「どうした?ペッピー」

ファルコの声もいとわず徐に立ち上がり、眠っている背中に手を突っ込んだ。尻尾は一本、横から出ている。

「なっなにやってんだ!」
「見てろファルコ」

横からずるりと引っ張り出す。もう、言いたい事はわかった。

尻尾が増えている。

「ゲ…マジかよ…」
「お前達、やっぱり…」

整形が自由自在な現代でも、二本目の尻尾が生えるというのは考えづらい。
偽物かとファルコが触り比べるが、どちらも同じ毛並み。その時脳裏に浮かんだのは、あの奇妙な光。もしやペッピーは、それを知っているのか。

「やっぱりって何だよ…」
「解りきっておるだろうが。何か、お前にもおかしいことは無かったのか?」
「おかしいって…俺には、何も…」

心当たりがない。するとソファーで眠っていたクリスタルが目を覚ました様で、パンサーの声が耳に届いた。

「クリスタル、無理は禁物だぞ!」
「平気よパンサー!というか、何で貴方が居るのよ!」
「俺が君達を助けたんだよ!蛙君と狐君はついでだけど…クリスタルが無事なら…」
「フォックス!スリッピー!」

パンサーに目も呉れず二人の元へ駆け寄り、うるうると瞳に涙を溜める。ペッピーも見かねて肩に手を置き、言った。

「大丈夫だ、まだ気絶してるが男ならすぐ覚める」
「っ…こんなことなら…行かなければ良かったわ…」
「本当にそうだった…。だがもう、取り返しがつかん」
「え…、どういう…事?」

クリスタルも二本の尾をみて驚いたのだろう。そして、ファルコのほうをじっと見つめる。

「じゃあもしかして…あのファルコの瞬間移動も…」
「瞬間移動?ビジョンを使えば出来るじゃろうが」
「違う!スカイクローごと一瞬で一キロの距離を移動してきたのよ!」

ペッピーとの会話を聞いて思い出したのか、「あー!」とファルコが叫んだ。

「早く行こうと思った瞬間急にお前らの動きが遅くなって、空気が重くなった気がしたな。で、移動したら戻ったんだ」
「自分の時間を遅めたのか!」
「まぁどうせ一時的なもんだろうが、試しに…」

言った途端、ペッピーの前からファルコが姿を消した。

「あれ?オーイ!どこいった!」
「グエッ!」
「きゃああっ!スリッピー!」

何があったとぐるんと後ろを向けてみれば、スリッピーの腹の上にファルコが立っていた。それが目覚ましになったのか、勿論下で苦しんでいる。

「くっ苦しい!どいてファルコー!」
「はははは!マジで出来たぜペッピー!」
「し…信じられん…!これが月の魔力なのか?」

ハテナを浮かべる一同。
月に行く前、ファルコとフォックスが捲っていた本を手に取る。

「月の魔力って、ダイナソープラネットにある唯一の魔法の事?」
「いいや、少し違う。ダイナソープラネットに与える魔法の事だ。ムーンパスの妙な仕掛けが一番わかりやすい」

もう一度試しにと、瞬間移動でパッと本を手に取る。

「その魔力ってのはどんな仕組みなんだ?」
「現代の科学じゃ解き明かせないから幻の魔法とされてるんじゃ!何物なのかわからないから、何にでも変化する。」
「それが俺達の得た能力だったり…」
「30年前、若いパイロットを瀕死にまでさせたベテランを狂わせる毒だったり…とな」
「「毒!?」」

泣きそうな表情のスリッピーと、ファルコの声が被る。

「どうしようペッピー!オイラ能力手に入れた気配無いよお!」
「なッ!フォックスは尻尾が増えただけ…クリスタルは!?」
「わ、私もわからない…」
「くっ…運に任せるしか…」

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