短編小説

□Y,M,L,M W
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後々の事、タカ丸は家のある山へ帰し、留三郎は用兵隊の拠点に帰還した。しか
し彼は帰るなり倒れ込むように眠り更け、そのまま一度も目を覚まさなかったと
いう。
何も事情を知らないしんべヱ、喜三太、平太が心配げに見つめていたが、一方当
事者の乱太郎と団蔵は問われても終始口を開かなかった。

「しんべヱ、作兵衛は?」
「今日は実家の方にお帰りです…」
「そうか…。真似をしかねないから、言ったりするんじゃないぞ」

伊作が宥め、優しくも戒めた。しかし平太がやはり真相を突き止めたいとし、こ
う問うた。

「…善法寺先輩、食満先輩は、なぜ…」
「…、大したこと、無く…無いかな。」
「仇討ちしたいです」

小さく殺意を燃やす彼は、相変わらず体に見合わない大きなマシンガンを握った

しんべヱも喜三太も同様に、きっと顔をしかめている。

「仇討ちどころか、もう敵は死んだんだ…と思うよ。そりゃもう、嫌な悪霊だっ
たから」
「…どんな悪霊ですか?」
「うーん…」

言う善し悪しが掴めない。しかし名前くらいなら、何の当たり障りも無いはず。

「土井半助という人」

三人は答えも出来ず、息がのどの奥に詰まったような声を出すのみ。顔を見合わ
せ、焦りが露わになっている。

「何だ?どうした?」
「その人…」
「知ってるのか?」

しんべヱが懸命に言葉を探し、やっと、こう導いた。

「きり丸がいってた人…」
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