虚像の刻
□虚像の刻-幕末・序章-
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〜まどろみ〜
僕はまどろみの中にいた。
暗く、上も下も右も左もよくわからない空間に。
時々ふんわりと光が見える時もある。
あの光はなんだろう。
でも僕は光ではなく、彼等を追いかけている。
僕は誰かに言われて…
大人達に「捕まえて殺せ」と
言われて…
あの二人の赤ん坊を追いかけている。
無我夢中で追いかけた。
捕まえてどうするんだっけ?
あ?殺す?
子供の僕が?
僕って誰?
あの赤ん坊達も誰?何なの?
そんな疑問を抱きながら追いかけた。
手が届きそうな程近づいた時、
赤ん坊の一人が弾かれる様に急スピードで僕の方に寄って来た。
赤ん坊は眠ったままだ。
僕は赤ん坊を抱きかかえ、もう一人の赤ん坊を目で追いかけたが、もう一人の赤ん坊は遠くの方へ行ってしまったようだった。