story

□つないだ手とスピード
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二人で出掛けた帰り道、家まで送ってくれる瑛くんにそっと手を伸ばしてみた。



「手は繋がないって……
じゃ、小指だけな。」


最近の瑛くんは、ひと言ふた言いうものの、結局は手をつないでくれる。

手をつないでいると、誰よりも近くにいることを感じて、つい、顔が緩んでしまう。



そんな恥ずかしい顔、瑛くんに見られてたみたいで。

いじわる顔で、
「おまえ、なにニヤニヤしてんだよ? 」
って言われてしまった。

慌てて笑顔を引っ込めて
『二、ニヤニヤなんてしてないもんっ!』


って言ったけど、今更だよね?


恥ずかしいやら、気まずいやらで、しばらく俯き気味に歩いてた。


そうしたら、

「まぁ、おまえのニヤニヤは今に始まったことじゃないけどな?」

ってフォローなのかダメ押しなのか、瑛くんが言うから。

わたしはさらに焦って、
『で、でも。―――手を繋いでいると歩く早さが同じになるでしょ?
ホラ、瑛くんは背も高いし…足も長いでしょ?普通に歩いたらわたしより早くなっちゃうもん。
だから、手を繋いでくれて、歩く早さを合わせてくれて……
こういうのホントすっごくうれしくて!―――それで、あの…なんか…うれしいって思ったら…………。』
って、シドロモドロで…言い訳みたい…


すると今度は。瑛くんは黙ってしまった。
そして、まっすぐ前を見たまま、こっちを見てくんない。

(あれ?わたしなんか変なこと言っちゃった?怒らせちゃった?)

「……」

『あの、て、瑛くん?』

「ん?」

『なんかわたし、変なこと言ったかな?』

「いや別に。」


そう言いながらも瑛くんは決してこちらを見てはくれなかった。


―――――――けれど…つないだ手は解かれること無く、寧ろ小指だけでなくしっかりと握られていて。いつの間にか。



わたしはまたうれしくなっちゃったけど、
瑛くんにバレるとまた何か言われちゃうから、顔に出ないようにものすごく注意して家までの道を歩き続けた。

その後も、わたしが何を話しかけても瑛くんは、うん、とか、ああ、とかばっかり。


たまに、瑛くんがぶつぶつ言ってるような気がしたんだけど…。


横目でチラリと見てみたら、夕日でキラキラ、オレンジに染まった瑛くんの顔は、やっぱりきれいで整ってて、でも怒ってる感じじゃなかったな。


でも、なんだか今日の瑛くんはへんなの。
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