十一番隊 壱
□出逢い
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「・・・気持ちで負けてんじゃねぇよ。そんな事思ってる暇あるなら鍛錬しろっ。中途な態度が気にいらねー。女だからって気にすんなっ、根性見せろよ」
「すみませんでした。・・・体調良くないので帰ります」
確かに中途半端だった自分の態度を恥ずかしく思い、慌てて立ち上がり部屋を出た。
「アイツ、悩んでたんだな・・・」
「一角も言い方悪かったよね。S、好きな男でも出来たのかな。確かに最近綺麗になったと思うよ」
「好きな男か・・・」
涙を拭くことすら忘れて、ボゥーっと回廊の塀にもたれ掛かって、頬杖着いて空を眺めてた。
・・・何さっ、私だって恋ぐらいしたい。
一角さんにはわからないよ。でも、十一番隊で席官である私は強くありたい。
結局、二兎追う者は一兎をも得ず。
中途半端な自分に苛立っていた。
いっそ、好きな人でも出来れば集中できるのかもしれない。そう思ってたけど・・・
「もう、いっそ、男なら良かったのに・・・」
「何だ、男になりてぇのか?」
後ろから声がして、振り返ると技術開発局の阿近さんが煙草をくわえて立っていた。
「阿近さん、聞いてたんだ」
「ああ、女はイヤか?S、いい身体してるのに勿体ねぇな」
セクハラ発言なのに、この人が言うと不思議とイヤラシく感じない。
「・・・私だって恋したいって思うのは、修行が足りないのかな。でも、男の人だって恋したいよね。・・・うちの上司達は違うだろうケド」
「まぁ、アイツらは特別か・・・試してみるか?」
阿近さんの目が一瞬光ったように見えた。
ヤバッ。実験台にされるっ。男にされるっ。本気でそう思って青ざめた。
「いえっ、いいです、お構いなくっ」
「ん?バカS、お前を男にしようなんて思っちゃいねぇよ。でも、実験につきあえよ」
「何の実験ですかーっ。イヤですよ、私」
首をブンブンと横に振った。
「おや?もしかして怖ぇのか?威勢がいいと思ってたのは、俺の思い違いか」
・・・ムカッ。この人がこんな事言うのは、私を挑発してるって解ってる。
でも、腰抜け扱いされるのは許せない。
「・・・内容によりますよ?」
「(クッ、単純なヤツ)そうだな。新しい義骸作りたいんだ。イイ女のな」
チラッと私の方を見る阿近さん。
「えっ、モデルになるんですか?」
「女心っていうのを把握したいんだが、なかなか・な。データ欲しいだけだ」
「データ?私、好きな人とかいないですけど、大丈夫ですか?」
「ああ、その方がいい。恋心か・・・恋愛に疎い十一番隊なら、かえってデータ採りやすそうだな・・・」
「?」
何が何だかわからないまま、技術開発局に連れて行かれた。
部屋に入ると、得体の知れない器具とかあって本能的に震えた。
「何だ、やっぱり怖ぇーか?」
「こっ、これも女心ってヤツですっ」
「へいへい、とりあえず、死覇装脱げ。これに着替えろ」
綺麗な女物の着物が手渡された。
意味がわからないまま着替えてくると、阿近さんが腕組みをして私を品定めするようにジッと見た。
「座れ。化粧してやる」
男の阿近さんに綺麗に化粧されるっていうのも変な気がしたが、私はそのデータ採取とやらに乗ってしまった。