九番隊 壱
□俺のS〜愛の行方〜
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「九番隊第五席Sを十一番隊七席に任命する」
東仙隊長が心配そうな顔をしている。
急な手配で、しかも十一番隊なので不満そうでもあった。
相談に乗ってもらった乱菊さんは十番隊に誘ってくれたけど、私は戦闘集団の十一番隊を選んだ。
自分をしっかり見つめ直し鍛えたいから。
副隊長に挨拶する為、副官室に入ると修兵さんは今まで見たことがないような弱々しい表情をしていた。
思わず駆け寄りたい衝動に駆られたが、ぎゅっと唇を噛みしめる。
「今までお世話になりました。副隊長、ありがとうございました」
心の底からそう言った。
・・・ありがとう、修兵さん。
「S、無理だったら・・・帰って来いよ」
九番隊へ? 貴方の胸へ?
今なら笑顔で言えた。
「さよなら」
「クソっ!!」
Sが部屋を出ていくと拳で机を叩いた。
拳の痛みは気にならない。
Sとは、編集の仕事も一緒にやってきて一番長いつきあいの女だった。
もう何年経つか・・・確かに、浮気をしたこともあった。でも、所詮、浮気。
Sがずっと一番だったはず。優柔不断な俺の態度がSを傷つけた事もあった。
でも、「俺のS」はいつも許してくれて・・・昨日だって、愛し合ったはず。
いや、愛し合ったと思っているのは俺だけなのか?
俺にとっては一番大切な存在だったはずなのに・・・何でこんな事になるんだよ、S。
問い詰めたかったが、昨日のあの真剣な顔を見たら、何も聞けなかった。
・・・最後に見せた綺麗な笑顔がずっと頭に残った。
アイツは自分で一歩踏み出したんだ。俺は・・・