十一番隊 弐
□ドン☆
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(2015.6.7〜11.8拍手夢)
僕は泣く子も黙る十一番隊第五席 綾瀬川弓親。
最近気になることがある。髪の手入れも気になるところだけど そうじゃあない。
「おらおらー、かかって来いよ」
荒くれ者の多い道場で竹刀を肩に乗せそんな台詞を言うのは、一角だと思っただろう?
これが僕の心配の種。その声の主は可愛い女の子なんだ。
「アンタ達、アタシが女だからってナメてんじゃねぇよ!」
・・・まぁ環境が環境なだけに、威勢の良いのも解るんだけどさ。どうも、見た目とギャップがある。
彼女はまだ年若い女の子なんだ。
いくら十一番隊で男勝りだってこの言葉遣いはちょっと、美しくない。
ほら、やっぱり女性的な部分も必要だろ?
うん。
僕は、彼女がこれから美しく成長していく上で、強さとともに女らしさってモノも知っておくべきだと思ってる。
もちろん、恋愛経験も美しさの秘訣さ。なのに・・・
「んー?弓親、どうしたんだ、こんな隅っこで。眉間にしわ寄せて何見て・・・ああ、アイツの稽古か。なかなか気合い入ってるよな」
呑気にそう言う一角をキッと睨む。ったく、一角が彼女を鍛えるから・・・
あの言葉遣いも一角そのものだし。
ああ、そうだ。
此処は彼女が師匠と崇めている一角に責任とってもらおう。
そうだな。まずは・・・『きゅんきゅん』ってその身に感じてみたらどうだろう。
例えば──
「一角、『壁ドン』って知ってる?現世で言われてるヤツ」
「ん?あー、あれな。俺なら直接言うケドな」
えっ!?直接?
『壁ドン』を知っていただけでも正直驚いたのに、直接だって?直球勝負か、一角は。
「大体よー、五月蝿くしてる隣も悪いが、壁を叩くってのもどうかと思うぜ。俺が叩いたら下手したら器物破損だぜ。はははっ」
「・・・五月蝿いから叩く?壁を・・」
「ああ、壁ドンだろ?」
ニヤッと、どや顔で僕を見る一角に、深くため息を吐く。
おかしいと思った。
それって、アパートで隣人がやるって感じの、アレだよね。
期待した自分の愚かさにへこむ僕を気にもせず一角は彼女の方へ向かった。
「おい、俺が相手してやるよ。ソイツらじゃお前の相手になんねぇだろ」
「えっ、ありがとうございます!三席!」
ん?
嬉しそうに走ってくる彼女、結構、女っぽ・・あっ、危なっ!!
「おいっ!危ねー・・うおっ!?」
床に飛び散った汗にすべって彼女が転びそうになる。それを一角が慌てて・・・反射神経はなかなかのものだったが二人とも結局床に転がった。
「・・・あ」
「ったく、危ねーな、気をつけ・・あっ、悪い」
「いっ、いえ」
ふぅ〜ん。
なぁんだ。僕の杞憂ってヤツか。
一角に覆い被さられる形で恥じらう彼女は、可愛い女の子そのものだ。
はいはい、『床ドン』ってヤツだね、これ。
あかくなってる2人を残して外に出る。
爽やかな風を感じると自然と優しい気分になった。
end
ちゃんちゃん☆(2015.5.16日記より)