十一番隊 弐
□移る季節に
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(2013.10.6〜12.20拍手夢)
いつのまにか あんなに暑かった夏が過ぎ、朝晩は肌寒くすら感じるようになってきた。
「ちょっと首の後ろがスースーするかな」
真夏の・・・十一番隊との合同訓練中、私は髪を短く切った。
理由は暑かったから。
・・・嘘。自分の力量への憤りをふっきりたかった。
自分の弱さに悩み悲観してばかりの六番隊三席なんて、みっともないでしょ?
そんな私のどこをどう気に入ってくれたのか、あの合同訓練以来、十一番隊からの誘いが毎週1回だけど必ずある。
『うちの隊に来い』と誘ってくれるのは正直嬉しいけれど、六番隊の任務を放り出して自分の強さだけを望むつもりはない。
今日は金曜日。今週も「書類、持ってきてやったぜ」と斑目三席が私の前に現れた。
「明日非番か?もし自分で訓練とか考えてるんなら、俺も付き合うぜ?」
阿散井副隊長は席を外している。
いいのだろうか、この申し入れに甘えてしまっても。
「斑目三席も非番なんですか?・・・いいんですか、他隊の私が稽古つけてもらっても」
「強くなりてぇんだろ。稽古相手がいた方が良い。阿散井ともよくやったもんだ」
副隊長が十一番隊に居た頃、斑目三席に鍛えて貰ったと聞いたことがある。
・・・移隊は出来ないけれど、稽古をつけてくれるなんて私にとっては ありがたい話。
髪は斬り捨てたけれど、強さへの欲は無くしてはいない。
「是非お願いします」
斑目三席は強い。
コテンパンにされて、自分の弱さに向き合うことで強くなれるなら・・・上等。
「おう、楽しみだ」
そう言って私の頭に掌を乗せた彼の明るい笑顔に私の肩の力も緩んだ。
私なんかに真剣に向きあってくれる斑目三席に、私も礼を尽くすように斬りかかる。
「筋は良い。だが実戦では―」
「はい」
私は休日なのに死覇装を着て出掛けることが多くなる。
毬栗のようだと言われた頭を、三席に撫でられるのが心地良い。
「一角って呼べよ。いい加減俺の気持ちに気付けよな」
この秋風が私の頬を撫でると、男の香りを運んできた。
「あ・・」
頬を掠めた感触に立ち尽くす私。
「さ、さあ、次の稽古始めるぞっ」
照れくさそうに見えた後ろ姿を目で追いながら、「はい、お願いします」と返事して小走りする私は・・・振り返った一角さんの笑顔に胸が鳴り、立ち止まる。
「どうした?心配すんな。稽古で弱ったお前を襲ったりしねーよ。ただ、俺は稽古も恋もやめねーから覚悟しておけよ?」
「・・・覚悟、しておきます」
それだけ言うと、深呼吸して一歩踏み出した。
(甘甘話はまた別で♪)
end