十一番隊 弐
□春眠
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(2013.3.22〜8.11拍手夢)
☆4周年感謝☆
春の眠りは心地良い。
夜が明ける時間が早くなり、辺りが明るくなっているにもかかわらず、温かい布団から抜け出すことが出来ないぐらい。
けれど、今日は早くに目が覚めた。
すでに身繕いは終わっている。
「・・・行くか」
鬼灯丸を手に取り、気を引き締めて隊舎へと向かう。
十一番隊では危険な任務も多い。
毎度のことながら、この張り詰めた緊張感もまた愉悦なり。
集合場所へ着くと、どうやら俺が一番乗りのようだ。
弓親はまだ来ていない。・・・アイツもまだか。
「チッ、気が逸ったか」
上位席官のみで出向く任務だ。敵も相当な強さだろう。もちろん、俺自身 それを望んでいる。
「おはようございます。一角さん」
背後からの、十一番隊には似つかわしくない可愛らしい声に振り返る。
「お、ああ。お前も早いな」
「一角さん、楽しそうですね」
フフッと笑う姿がまた可愛らしい。
「お前は楽しくねぇのかよ。・・・強いくせに」
四席のコイツは、更木隊長が引き抜いてきた女席官で、始解した斬魄刀は身の丈ほどもある。
俺から見れば、細っこい腕だ。
そんなのを振り回す腕にゃ見えねぇんだがな。
「ねぇ、一角さん?」
人懐っこい笑みで俺の隣に腰掛けると、不意に俺の名を呼ぶ。
弓親を待つ間の他愛ない会話だと思い、顔も見ずに応じる俺。
「ん?」
「もし、私がこの戦いで命を落とすことになったら、貴方は悲しんでくれますか?」
俺は・・・その言葉の真意を探ろうと彼女の顔を覗き込む。
冗談ぽく微笑んではいるが、瞳は真剣なように見えて・・・そのとき、初めて胸が疼いた。
大きな瞳には、大きく目を見開いた間抜けな俺の顔が映っている。
「俺も一緒に行くんだから、絶対死なせねぇさ」
頭を撫でてやると、少し震えているのが解った。
何でだろう。胸が苦しい。
「・・・はい。私も貴方を死なせませんから」
「ハッ、生意気言ってんじゃねーよ」
戦闘前の二人の会話はそれだけだった。
これから血まみれになる俺達なのに、あの心地良い眠りに包まれるような感覚を傍に感じた気がした。
end