十一番隊 弐

□甘い予感?
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(2012.4.22〜8.19拍手夢)


「んー・・・」

目を開くと白い天井。

・・・ああ、此処は四番隊だっけ。

十一番隊との合同任務で戦闘に出たのはいいけど、朝から貧血がひどかった私が役に立てる筈もなく、結局 邪魔になってしまって・・・。

『馬鹿野郎!身体が本調子じゃないくせに戦闘に加わって足引っ張ってるんじゃねーよ!!中途な覚悟で出てくんなっ』

斑目三席が私に怒鳴っていたのを思い出す。

・・・野蛮な十一番隊との合同任務だったけれど、折角 檜佐木副隊長が三席の私を信頼して選抜してくれたのに・・・情けない。

身体を起こして見回すと、傍にいた四番隊員と目が合った。

「あ、どうもお世話かけました」

「目が覚めましたか。三席、痛みは残っていますか?傷は処置しておいたのですが、少し熱があるようですので今夜は此処で休んで下さい。檜佐木副隊長もそのように言っておられました」

「・・・はい。ありがとう」

何とか愛想笑いを作ると、そのまま 寝台に身体を埋める。

熱・か。どうりで頭がぼんやりしてる。


・・・戦闘はどうなったんだろ。

この部屋には他にも寝台があるのに、私しか寝ていない。ということは、みんな無事?


どうしても気になった私は、さっきの隊員に聞いてみようと再び起き上がる。

でも、身体がぐらついてフラフラする。


「お前っ、何やってんだ!」

「え・・あ、斑目三席」

私の身体を支えているのは、昼間私を怒鳴った斑目三席その人だった。


「危ねーだろが!フラフラしやがって」

「・・・何だか、怒鳴ってばかり」

野蛮な人・・・うちの隊とは大違いね。

「あァ!?テメーが怒鳴られるような事ばかりしてっからだろ。大人しく寝てろ!」

同じ三席なのに、何でこの人は高圧的な態度ばかり・・・あ、そうだ。任務報告なら この人に聞いた方が―

「あの、斑目三席。任務の結果を教えていただけませんか?怪我人とか状況を―」

「任務は無事完了した。軽傷を負った隊士達はもう皆帰った」

「そうですか。・・・良かった」

「良くねーよ。お前が一番重傷なんだ」

「・・・すみません」

「同じ三席同士だから敬語はよせ。・・・俺こそ、すまなかった」

私を寝台に寝かせ、脇にあった椅子に座っていた野蛮人 ううん、斑目三席が・・・今、謝った?

そういや、何で此処に来てるの?

「・・・どういう意味?」

「怒鳴って悪かったって言ってんだよ。あと、自分の部下を庇ったお前を護りきれなくて怪我させちまった。すまねぇ」

私が自分の部下を護ろうとしたのは当然で、怪我したのも斑目三席の所為ではないのに・・・どうして頭を下げるの?


「私の方こそ足手纏いで、ごめんなさい」

そうよ。体調が良くないのにムリした私が悪い。

「いや・・・中途な覚悟じゃ、あんな戦いはできねぇ。お前が無事で本当に良かった」

もしかして、私のこと心配して来てくれた・とか?

じっと見つめると、何だかそわそわした様子で周りを気にする斑目三席。

「そ、そういや、あれから何も喰ってねーんだろ。・・・ちょっと待ってろ」

ええっ、懐から林檎を取り出した?

驚いたけれど、サクサクと皮をむく音を聞いていると妙に落ち着いてきた。

私は安心感に包まれた気分で目を閉じ、呟いた。

「うさぎがいいなー」

「はいはい、我が儘なお姫様だ」


結局そのまま寝てしまい、朝起きると斑目三席の姿は見えなかった。

ただ、枕元に置かれていたうさぎ林檎は、予想以上に細かく丁寧に切られていて、まるで彫刻のようだった。

「何コレ。どこから食べればいいのよー・・・プッ」

朝日に思わず目を細めると、林檎のうさぎに話しかける。

「さぁて、まずは檜佐木副隊長に報告に行って・・・それから、十一番隊へ行かなきゃ、ね」

―野蛮人だなんて思ってごめんね。って言わなきゃ。

そして、私がうさぎ林檎の作り方伝授しなきゃーね?

甘い林檎に感じた予感。

口の中に甘さが広がると、体調もすっかり良くなった気がする。


(追加文&卑呪那様イラスト)


林檎をうさぎの形に切りながら、昼間の任務を思い出していた。

顔を合わす程度で まともに話した事なんてなかったが、いつもとは違う青白い顔で任務に来たコイツが無理するのを見ていられなくて・・・

怒鳴って戦闘から外そうとしたのに、いきなり飛び出していきやがって。

俺はコイツを護りきれなかった。

コイツは自分の部下を護った。

護りたいものを護れなかったのは、俺だ。

「・・・ほらよ、うさぎが出来たぜ?」

差し出した林檎に、返ってきたのはコイツの寝息。

「何だ、寝たのか。熱は・・・少しあるか?」

林檎を枕元におき、紅い頬に触れ 額を当ててコイツの熱をはかる。

間近で顔を見て、俺の熱が上がった気がした。

「は、はやく治せよ。また作ってやっから///」

寝ているヤツにわざわざ話しかける自分に 更に赤面して、慌てて部屋を出た。

夜風で熱を冷ましながら帰る俺の心を占めるのは、林檎のような頬の女。


end

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