九番隊 弐

□六年目の春
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(2014.3.22〜5.23拍手夢)

【サイト開設5年感謝】


「・・・もう春ね〜」

私が呟くと、修兵は仕事の手を止めて私の顔を見た。

執務室で2人きり。私は愛する彼に休憩のお茶を出す。

「ん?ああ、そーだな」

そう言うとすぐ、机の上の書類に視線を戻す。

ふふっ、気のない返事。

でも、無視されなかっただけイイかもね。

修兵とは同じ隊で丸5年も部下兼恋人、おっと違った。
ダメダメ、こういうのって順番が大切よね。

自分なりのこだわりっていうか――

えーと。

『恋人兼部下』を丸5年もやっていると、言葉数が少なくても空気を察することは出来る。

もうじき6年目。

仕事的には便利なんだろうけど、恋人としては・・・世間的には新鮮さが足りないと言われる時期なのかもしれない。

もちろん、私は彼を愛してるに決まってるけれど、言葉にするのは少し照れるような。

恋のドキドキ感ていうのは、つきあいが長いとなかなか感じられないって言うケド、照れもあるのかもね。

まぁ、愛の言葉をねだって修兵を困らせるほど、私も子供じゃないし。

それが可愛げないのかもしれないケド。

お茶を口に含み、窓の外を見ていると、つきあい始めた季節の所為か、妙に感傷的になってしまう。

恋が、深い愛情へと変わっていく・・・そうよね?修兵。

執務室の中の彼を見ようと振り返ると姿は見えず、私の隣に立っていた彼に驚く。

「もうっ、びっくりした〜」

「・・・そういや、春だったな」

「ん?」

修兵は手に持っていた湯呑みを傍の机に置く。

そういう仕草もずっと好きだなー・なんて、私は思って彼の指を見つめてる。

「お前が俺を好きになってくれたの、この季節だったなと思ってよ。俺、5年前の春に思い切って告白したんだから」

「え・・・」

思いもかけない言葉に、『修兵が告白してくれる前からずっと好きだった』と反論することすら出来ない。

「俺のこと、好きになってくれてありがとう」

少し照れたのか頬を染め、私に笑みをくれる。

熱いよ、胸が。

その表情は優しいものなのに・・・私の胸は焼き尽くされそう、激しい恋心に。


「・・・5年経っても私をドキドキさせる男なんて今後現れないんだろうなぁ」


嗚呼、この男はどれほど私の心を掻き乱すのだろう。

穏やかな愛情の中に、きっとこれから先も――

「それって俺がイイ男だって褒めてるってコト?」

「・・・知ってるくせに」

そっと寄り添うと、ボソッと呟いた。


「好き。ありがと」

言葉足らずなまま、その胸に顔を埋める。

私を好きになってくれて、こんなに愛することを教えてくれて、傍にいてくれて、嗚呼、言い尽くせない。

「これからもよろしくな」

「こちらこそ」


随分慣れた筈の彼の香りに酔いしれる。

これからもずっと愛してる。


何年経っても、ずっと傍に――


end
 

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