九番隊 壱

□伝えたい気持ち
1ページ/1ページ

(2013.8.16〜9/29拍手夢)

☆8/14 修兵ハピバ☆


今夜から一緒に過ごす筈だった。

そして明日は2人で合わせて取った休暇だった。

それが俺の仕事が終わらなくて、伝令神機を手に取り 仕方なく彼女に「悪い。今夜行けそうにねぇ」と告げることとなる。


『仕事だもの。仕方ないよ。あっ、明日は?』

明るく振る舞おうとしている声に、追い打ちをかけるように俺は告げる。

「休日返上なんだ。ごめんな」

『・・・そっか』

今度は『仕方ない』とは言わないんだな。

悲しむ彼女の反応を冷静に見ている俺自身に、チクッと胸が疼く。

今まで付き合ってきた女と比べることはいけないんだと思っちゃいるが、この子は、自分から逢いたい・と駄々をこねるタイプではない。

正直、女に振り回されるのは面倒だと今までは思っていた。

特に、副隊長という肩書きや外見で俺を評価していると思える態度を 一瞬でも見せられると、どうしても俺の気持ちが冷めてしまう。

その点、今の彼女は健気で可愛くて、頭も良くて、俺のことも考えてくれて。

『謝らないで。修兵は自分のやるべき仕事をしっかりやって。でも、無理はしないで?次の休日に逢うのを楽しみにしてるから』

理想的な心遣いだ。なのに、何故か俺の胸はもやもやしている。

「・・・出来すぎだっつーの」

『え?』

「いや、何でもない。じゃあな」

苛立ちを込めた声のまま、通話を切ろうとした瞬間『待って!』と切羽詰まった叫びが聞こえた。

『あの、誕生日おめでとう。これだけは伝えておきたくて』

「え、あ、そういや俺の誕生日だっけか」

『ん・・・ごめんね。仕事の邪魔して』


震える声を聞き、俺はハッとする。

何やってんだ、俺。感じ悪い。このまま終わらせていいのか?

「今すぐ逢いに行く!」

言うが速いか、俺は速攻で彼女の元へ走った。

初めて、もっと俺に甘えて我が儘言って欲しいと思える女の元へ。


「え、修、兵?」

「泣いてんのか?・・・あのな、もっと正直に自分の気持ちを言って欲しい・・・お前のコト、もっと知りてぇから」

「私の、正直な気持ち?」

「ああ」

伝令神機では見えなかった彼女の涙。

その涙を隠すように彼女は俺の死覇装を掴みそのまま胸に倒れ込む。


「修兵に嫌われたかと思った・・・本当は逢いたかったのに『仕方ない』ってあきらめたフリしてる狡い私だから」

「そういうのは無理せず伝えろよ。俺だけ逢いたいのかと思うだろ」

本気に好きになった相手だからこそ、伝えて欲しいときもある。


「逢って、お祝いしたかった」

「それが聞きたかった」

これから、記念日に一緒に過ごせない時もきっとあるだろう。

けれど―

「気持ちを伝えるのってムズカシイね」

「馬鹿。こうすりゃ いいだろ?」

顔を上げた彼女にそっと口付ける。

唇だけじゃ物足りねぇが、まだこれから仕事だ。


「誕生日か。これからもお前に一番に祝ってもらいたい」

「もちろんよっ」

笑顔で即答されて、力が抜けた。

仕事のストレスも溜まってたのかもな。それが、逢って気持ちを伝えるだけで癒された。


「ははっ、意味わかってんのか?」

「?」

プロボーズは何度でもしてやるさ。

共に祝い、楽しみ、悲しむ・・・そうしたい相手だから。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ