○ 一次創作 ○
□ 放浪者
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先ほどより幾分か勢いの弱くなった火の周りを、青年と5人の少年少女達が囲んでいる。
先ほど青年に刀を、突き付けた少女は、青年の首筋に刀を当てながら、自分より幾分か幼い少年達が肉にかじりついている様子を見ている。
青年は言いたい事が色々とあったが、辞めた。
それは彼女達にしてみれば、安い同情であり、自分達の境遇を利用しようとする行為であり、彼女達の警戒心を強める物であると考えたからだ。
そんな青年の様子を不審に思ったのか、刀を突き付けた少女が刀を握り直し、刀を僅かに強く押し当てる。
「……」
それでも青年は動ずる事無く、そろそろ食事の終わる少年達を、穏やかな瞳で見ている。
「……何でだ?」
とうとう痺れを切らしたのか、少女は青年に話かける。
「何がだい?」
「あたし達の事を聞き出そうとしない。
刀を強く当てても命乞いすらしない」
「……君達が身の上話を聞いて欲しいなら、聞くよ。
聞いて欲しくない事を聞き出そうとする程、僕は野暮じゃない」
彼は少しだけ肩をすくめてみせると、今度は自分の両手に視線を落とす。
「……なあ」
再び少女が口を開く。
「ん?」
「何で大人達は、他人から物を、命を、自由を奪い取るんだ?」