○ 一次創作 ○

□ 放浪者
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 その世界は何の変哲もない世界だった。

 為政者は皆、覇権を巡って争い、人は毎日のように死んでいく、そんな世界。





 1つの広大な平原に、一筋の煙が立ちのぼる。

 煙の元では、1人の青年が火の前で丸太の上に腰掛けている。

 その双眸は火を、正確にはその真上にあるものに向いている。

「……そろそろかな?」

 彼はそう言うや否や、先ほどから見つめていたものを手にとった。

 と同時に、

 青年の後ろから、1つの影が飛び出し、

 彼の背に鋭く光るものを突き付けた。

「動くな!」

「……やれやれ、物騒な世の中だ」

青年は背中に刃を突き付けられているのを大して気にする様子も無く、肩をすくめてみせる。

「五月蝿い!
 こっちの言う通りに…」

 刃を突き付けている人物が言い終える前に、彼は先ほどまで焼いてた肉を、背中越しに略奪者に向けて

「君が……君達に必要なのは食事(これ)だろう?
 お嬢ちゃん」
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