短編((庭球、復活、Dグレ))

□嫌いな煙と気になる彼
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「嫌いなの」

「あ?」


屋上のフェンスに寄りかかっている男子がタバコを吸っているのを見て言った。
その少年は私の言葉の意味が良く分からなかったのか、
それとも私の姿が見えないからか、
整った外見のわりに間抜けな声を出した。

それがなんだか面白くてクスリと笑みを零す。


姿の見えない私に苛立ったのか、少年の眉間には深い皺。
その時また風に乗ってタバコの匂いがした。
それを手で払いながら彼の前に姿を見せる。


「ここ、ここ」


スカートを風に揺らしながら空を見ていると、私に気付いた彼はポカンとした顔から瞬時に真っ赤になった。


「て、てめぇ早く降りろ!」

「なんで」

「良いから早く降りろ!」

「命令されるの嫌いよ」


必死な様子の彼を見て口では文句を良いながらも、軽い動作で立っていたタンクから飛び降りた。
その際に彼はさらに真っ赤になり何か呟きながらフェンス側を向く。
その横にとことこと歩いていき彼を見て吹きだした。


「ぷっ・・・君は純情な少年だね」

「はぁっ!?
 てめぇいい加減なこと言うんじゃねーよ!」


私の言葉に噛み付く彼。
見た目不良な少年にしては、こんなもん小さくてかわいい抵抗だ。
それに本当に純情だしね。


「ちゃんとスパッツ着てるから見えないよ」

「なっ!」


だって私の言葉にこんなに真っ赤になって固まるんだもの。
面白い少年だね、君は。


「ふふっ」


口元を押さえて小さく笑ったその時、
彼の口にくわえられているタバコが視界に入り笑顔が少し引きつった。
固まっているのをいいことにそのタバコを取って床に擦りつける。
するとすぐに火は消え、少し黒くなった床にポイと捨てる。


「・・・なにやってんだよ」


そこでやっと落ち着いたのか、捨てられたタバコを見てこちらをジト目で睨む彼。
そしてまた懐からタバコを取り出そうとする彼の手を握った。


「だから言ったでしょ、嫌いなの」

「・・何がだよ」

「分かってるくせに」

「嫌いならどっか行きゃぁ良いだろーが」

「嫌よ、私が先にいたもの」


私の言葉に渋々といった風にタバコの箱から手を離すと、屋上を出て行こうとする。
しかしその手を私がまだ握っているため、彼は後ろにつんのめりそうになった。
咄嗟に手を離す。

その後踏ん張って堪えると怒りの形相でこちらを見た彼の頬を、両手で包み込んだ。


「どこに行くの、獄寺隼人」

「タバコが吸えるところに決まってんだろ」

「だめよ」

「はぁっ?!
 なんでてめぇに決められなきゃいけねぇんだよ」

「私がここにいて欲しいから」

「・・・意味分かんねぇ。
 てかなんで俺の名前知ってんだよ」

「ふふ、内緒」

「・・・はぁ」


話しているうちにだんだんと呆れた表情になってきた獄寺を見て笑う。
頬の手を外して鼻歌を歌いながらフェンスに寄りかかり空を見上げる。

数秒たった後、深いため息と共に隣りに獄寺が寄りかかったのが分かった。


その事に胸が暖かくなって、また小さく笑った。



「・・・で、お前の名前はなんだよ」

「なーいしょっ!」

「ちっ、変な奴」






嫌いなと気になる
(嫌いなタバコを吸っている彼が)
(どうも私は気になって仕方ないらしい)
.


【どうでもいい裏設定】
ヒロインの父親は喫煙者で、それが原因で肺ガンになり死亡
それ故に煙草が嫌い
・・・そして名前変換ないね!
 

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