短編((他ジャンル))

□その問いに答えるのは__。
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夜風で揺れる髪が耳をくすぐった。
荒く息を吐きながら、背中に触れているぬくもりを感じる。
 
大嫌いな、アイツ。


「・・・っは」


いつもの言葉を出そうとして口を開くが、それは音にならなかった。
代わりに出たのは、


「…い・・のか、?」


体をひねってアイツを視界に入れると、そのまっすぐな視線で貫かれる。

ひくりと喉がなった。

しかしその視線に震えながらも再び口を開く。


「いいのか・・・って言ってんだろーがよ…!」


もうプライドなど残っていなかった。
何も言わないアイツに、頬をひとすじ涙がながれる。


「‥っ・・・・好きになって…いい、のか・…っ?」
















「いいよ」




突如聞こえた声。
それは目の前の男が出したもので。
それに瞠目したとき、また涙がこぼれる。


「泣き虫なしずちゃん」


ふわりと笑うアイツ。


「ばかだなぁ、しずちゃん」


まぁ、そこも可愛いんだけど。
そういいながら手をひいたアイツに、俺は抱きしめられていた。
いや、だきしめるというよりは、



――――まるで捕まえるような。



耳に口を寄せられ、ゆっくりと目を閉じた。

もう、もどれない。

アイツが小さく笑った気配がした。
俺の中でアイツは、臨也の存在は麻薬のようなもの。
悪魔か天使か、その囁きは俺を縛って放さない。


「だって、しずちゃんは最初から俺のものなんだから…さ」




もどれない。
いや、もどりたくないのか。








いいんですか
(こんなに、…好きになっても)

いいんですよ
(それが俺ならね)

.
 

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