黒子
□15話
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隣を歩くなまえが急に立ち止まったかと思えば、顔をしかめたままそのまま静止をしていた。
「?」
「へっっっっっ、ブシッ!!!」
「……お前さ、」
「え、何?」
鼻を啜るなまえに青峰は完全に呆れ果てていた。呆れられている事に気付いているのかどうかは定かではないが、すっきりした様子のなまえは先に行っていた青峰の後を追うように小走りで彼の元へと急いだ。
「恥じらいって言葉知ってっか?」
「私青峰くんに言葉を教わるほど日本語に不自由はしてませんけど何か?」
「ウゼー」
「それに私が恥じらいなんか持った日にゃきっと青峰くん私に惚れるよ?」
「余計ウゼー。何か黄瀬と歩いてるみたいだからヤメロ」
心底ウザそうに顔をしかめてなまえを見る青峰にしたり顔をしていた彼女は、彼の先を見て何かに気付いたように青峰の制服の袖をちょいちょいと軽く引っ張った。何だと言わんばかりになまえの視線の先を追ってみれば、そこには男の子の手をつなぎ更に赤ん坊を乗せたベビーカーを必死に守るように階段を降りる若い母親の姿が映った。
「青峰くん、そのデカい身体をいつ役立てるの?」
「……今なんだろ?」
「正解。奥さーん!手伝いまーす」
青峰はベビーカーを担ぎ、なまえは母親からママバッグを預かった。階段を降りるのを手伝うつもりだったが、話を聞けば向かう方向が同じであったために途中まで彼女らと同行することになった。青峰は生まれて初めて、子供を肩車する経験をした。2メートルの視界は男の子を興奮させるには十分であったらしく、彼は大喜びしていた。
「どうもありがとうございました」
「いえいえ、困ったときはお互い様です」
「じゃあな坊主、デカくなれよ」
「ありがとうおにいちゃん、またやってよ」
「また会ったらな」
親子が見えなくなって、なまえはニヤニヤしながら肘で青峰を小突いた。超絶面倒臭そうに青峰が彼女を見下ろすと、案の定なまえは面倒臭かった。
「じゃあな坊主デカくなれよーだって、プクク…言っとくけど青峰くんの身長規格外ですら」
「うるせーブス」