黒子
□13話
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「こんばんは」
マジバで寄り道をしていた黒子と火神に声をかけたのは、桐皇の制服を着たなまえであった。黒子とは元同級生で部活でも良好な関係だったものの、火神との初顔合わせはIHで彼らが青峰にフルボッコされた直後であった。出会いとはしては最悪の部類と言える。
「あぁみょうじさん、久しぶりです」
「久しぶり。寄り道?」
「えぇ、みょうじさんもですか?」
「私は買い物の帰りに二人を見つけたから。火神くんも久しぶり」
「お、おう…」
察してはいたが、素っ気ない彼の態度になまえは苦笑いした。火神も思った以上に自分の態度が冷たかったことに内心驚いている。黒子も諌めるような視線を送っていた。
「ふふ、私のことは出来れば…そうね、青峰くんと同級生っていうよりも黒子くんと同級生って思ってもらいたいかな」
「わり…」
「ううん、これから仲良くなりましょう?」
ね?と言ってなまえは黒子ではなく火神の隣に半ば無理矢理腰を下ろした。黒子は彼女の予想外の行動に少し驚いてはいたが、火神はそうは思ってはいなかったらしくバーガーをひとつなまえに手渡した。夕飯前で少々空腹気味であったため、なまえは嬉しそうにそれを受け取った。
「火神くんは、アメリカにいたんでしょう?」
「まぁな」
「じゃあ、洋画を見ても字幕要らずね」
「日本語は不自由してますけどね」
「うるせぇ。みょうじ?は英語、話せるようになりたいのか?」
「そりゃーね。なまえで構わないわよ、言い辛かったら」
「じゃあなまえ、な。俺も別に「かがみん」……それは…」
「いいじゃないんですか?」
ふふ、ともう一度微笑むなまえに火神は諦めたように肩を落とした。暫くバスケとは関係のない話で3人は盛り上がる。黒子と火神はなまえを家の前まで送り、その後二人で彼女の話題で少々盛り上がった。火神は最初こそ警戒気味ではあったが、現在はかなりなまえの印象はいいものに変わっていた。
「なまえっていいやつだったんだな」
「そうですね、中学の頃とだいぶ印象は変わりましたがみょうじさんはとても良い人ですよ。まぁ、桃井さんと一緒で敵方にいたら厄介な人ですけど。だから、彼女がマネージャーじゃないと聞いて、正直ほっとしました」
「そういえば、あいつも帝光でマネージャーだったんだってな」
「はい。彼女はいろいろなことによく気が付く人でした。彼女のおかげで、桃井さんもキセキのメンバーも自分のことだけに集中出来ました。だからこそ、彼らは才能を開花出来たんでしょう」
「ま、確かに今もバスケ以外の話して息抜き出来たもんな」
そうですね、と黒子は微笑んで暫し当時のことを振り返った。居残って自主練していた時、一緒になって残ってくれたこと、部活中に些細なことで紫原と言い合いになったときに仲裁してくれたこと、そして、退部してからも自分を見つけては今まで通りに接してくれたこと……だがしかしそれが今のなまえと同一人物ではないことは、彼女本人以外は誰も知らなかった。
「僕たちは、本当にみょうじさんに甘えてばかりでした」