黒子
□3話
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「ほんっとマイちゃん好きねー」
「あ?うるせぇよ」
「てかそのおっぱい、入れてるよ」
「女がおっぱいとか言うんじゃ…はぁ!?」
水着で仰向けになってるマイちゃんの写真を見て、なまえはいつもの口調で言った。
「だってほら、おっぱいのところだけ盛り上がってるでしょ?」
「マジかよ…」
うん、と頷いてなまえは洗濯物を畳み始めた。二人の会話に、桜井のみならず今吉も引いていた。思春期真っ只中の男女の会話ではない。そう、それはまるで社会人の姉と高校生の弟の会話のようであった。
「あー、そういえばこないだあんたに告った子いたじゃん?」
「おー、あの巨乳だろ?顔がタイプじゃなかったから残念だよな」
「よかったわね、あの子ビョーキ持ってたらしいよ。竹田と山田が言ってた。」
親戚のおばさんこないだ愛犬のチワワに足咬まれたらしいわよ位の感覚でとんでもないことを言ってのけるなまえに、今吉と桜井は絶句した。豊胸の件にしても性病の件にしても、いくら気のない相手だったとしても女の子が異性の同級生に対して言うことではなかった。それに対しての青峰のリアクションも問題だ。あまりにも普通に聞き流している。お互いもう少し恥じらいを持つべきである。
「てかなまえちゃん何でそんなことに詳しいん?男子となんつー会話してんねん」
「すいません先輩、みょうじさんは学年のいろんな人から相談を受けてるんですよ」
「そーなんすよ、私は寂聴かっつーの」
「でもみょうじさんに相談すると好きな人とうまくいくとか悩みが解消出来るとか、結構評判いいんですよ。それに先生に対して全く物怖じしない感じとか結構憧れの的って感じですし」
「あーそういえば新任教師を説教して泣かしたのってなまえちゃんやったっけ?うちんとこでも有名やわ」
「いや、あれは社会人経験ないくせに偉そうにしてるのが腹立って…てか両思いだの悩みだのって別にたいしたこと言ってないんですけどね。なーんか視野が狭くなっちゃうんですかね。」
はい、と畳み終わった洗濯物を桜井に渡してなまえは立ち上がりバッグを手にした。どうやら帰るらしい。
「ま、確かになまえちゃんやったら何か相談したなる気もわからんではないな。ワシも相談があんねんけどな。どうやったら青峰は素直なええ子になるんやろか」
「あ?んなもんありえねぇ」
「さつきと違うタイプのかわいい巨乳なマネージャー入れたら良いんじゃないですか?あ、でも私はNGですよ」
「はっ、なまえ程度じゃ俺のやる気は起きねーよ」
はいはい、と言っていよいよなまえは家路につこうとした。同時に青峰の名を呼び彼も立ち上がる。さつきは一足先に部室を出て顧問と話をしているらしく、「さーつきー」とまるで歌でも歌っているかのようにリズミカルにスキップしながら、なまえは部室を後にした。
「なー桜井、ワシたまになまえちゃんが年上の姉ちゃんに見えてしゃーないねんけど」
「すいません自分もです」