黒子
□2話
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「みょうじさん、これ」
「え、何?」
「す、すいません!こないだ青峰さんのお弁当美味しそうって言ってたから…みょうじさんの分も作ってみたんです。」
「………え、あれ桜井が作ったの!?」
「す、すいませんすいませんすいませんすいません!!」
瞠目したなまえに吃驚した桜井は、弁当をまるで献上するかのように彼女に差し出しジャンピング土下座した。
「(ジャンピング土下座…)あ、ありがとう。ちょうどね、今からご飯買いに行こうと思ってたの。すっごい嬉しい!」
培われた営業スマイルとは違う、正直な感情で口元を緩めたなまえに、桜井はうっすら頬を染めた。別に恋に落ちたわけではないが。
「美味しくいただくね!あ、そうだ、お金払うよ」
「い、いいですいいです!好きで作ったんで」
「えー私のことがぁー?」
ニヤニヤとなまえが桜井にいたずら心を向けると、光速で頭を横に振られた。
「ち、違います!すいません!!」
「うん、まぁわかってたけど、そこまで拒絶されるとは思わなかったわ。でもホントありがとね。」
すいません、ともう一度謝る桜井の手には自分のそれとは一回りほど大きな弁当箱があった。青峰用のものである。
「桜井、それ」
「すいません、青峰さんのやつなんですけど、その、本人が見つからなくて…」
ふーん、となまえは自身の携帯を取り出した。
「あ、青峰っちー?お前のキャラ弁当(桜井製)は預かった。返してほしけりゃ今すぐイチゴ牛乳を用意して俺の教室まで来やがれ。じゃーの」
「…え、みょうじさん?」
まーあと5分くらいじゃない?とニコニコしながら嬉しそうに弁当箱の蓋を開けるなまえの言うとおり、5分後には盛大にドアを開ける音が教室に響いた。
「おいなまえ、言いたいことだけ言って電話切ってんじゃねーぞ」
「別に青峰くんと他に話すことなんてないし。愛の言葉でも囁き合いたかった?」
「俺らのどこに愛があるんだよ。ほら、さっさと弁当寄越せ」
「イチゴ牛乳」
なまえの図々しさに舌打ちをしつつも、しっかりと彼女の条件を飲む青峰に、なまえは彼の母親の育て方に感服していた。
「まいどありー。はい桜井、お礼」
「すいませ、えっ!?」
「だって折角お弁当作ってくれたのに悪いじゃない」
「なんだよ、お前イチゴ牛乳好きなのか?」
「いえ、別に好きというわけでは…」
「たまに飲むと美味しいじゃん、イチゴ牛乳」
「てめーの好み押し付けてんじゃねーよ」