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□古の記憶
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  第一章 流れ出る時の砂
 No.1 古の刻   
遥か古の時代、世界には二つ種族が存在しました。
一つは力を司り天を舞う竜の一族、竜は世界を見守る存在。
一つは癒しを司り緑愛す精霊の一族、精霊は世界を見定め大地と海に恵みをもたらす存在。
世界は二つの種族によって静かにその時を刻んでいました。
ですがその時は永くは続きませんでした。
突然黒い影が現れ、緑の大地を紅く焦がし、蒼い海を黒く染めました。
竜は悲しみ怒りその瞳は紅く燃え、怒りは大地と天をも切り裂き竜と黒き影の戦いは恐ろしく悲しい時を刻みました。
大地は腐り海は波もなく死の海とかし、精霊は荒れ果てた大地と海を見て悲しみ涙を零しました。
精霊の涙は大地に雨となり降り注ぎ、川となって海へと流れ込みました。
大地は草花が咲き乱れ新緑の大地となり、海は波音と潮風に包まれ蒼き輝きを取り戻しました。
世界は再び静かな時を刻み始めた頃、竜と精霊は新たな命を創造しました。
それを人と名付け大地と海を守り生きる事を命じました。
竜と精霊は黒き影との戦いで負った傷を癒すため、人に大地と海を預け竜は天高く、精霊は森奥深くから見守ることにしました。
旅立つ時、竜は深紅の玉を人に託し
<世界が光失うとき 紅き瞳を触れ我を想え 汝の想いに答えよう>
こう伝え残し・・・
今はもう語られない古き記憶の物語。
竜と精霊は伝説となり人々が自分の使命を忘れた頃、世界に再び黒雲が立ち込め始めていました。
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