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□おやすみにゃんこ
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綺麗な黒猫が目の前に一匹。




猫はとても勤勉である。

今も猫は、明かりを落とした寝室で、手燭だけを頼りに分厚い本をものすごい速さでめくりながら何やら書き付けをしていて、猫をじっと観察する俺にちっとも気付かない。

勤勉なのはいいが、これでは猫失格である。猫のくせに。

猫の艶やかな黒い毛並みをそっと撫でてやると、猫はそこでやっと気付いたようにこちらを見た。

でもすぐにまた書物に目を戻してしまう。けしからん、猫のくせに。

「秀麗、まだ寝ないのか」

「ええ…まだちょっと明日の仕事の調べものが…」

ぼそりと言いながら真剣な様子でまたバリバリ書物の頁をめくる。

「もう遅いから、寝た方がいいぞ」

「や、でも、これ読んで行かないとまた清雅に馬鹿にされる…」

うわの空で俺のことばに答えるなんていい度胸をしているじゃないか、猫。

しかも俺と同じ寝台にいながらどこぞの馬の…いや、猫の骨のことを考えているなんて!

ちらりと猫が読んでいる書物の表紙を盗みみて、俺はいい意趣返しを思いついた。

「秀麗」

「はぁい…」

「ちょっと寒い」

「…はぁい…」

「手をあたためてくれ」

「はぁい……」

「なあ、秀麗」

「…はぁい」

「おい、にゃんこ」

「はぁい」

「お前がそういう態度ならな」

「はぁい…」

「俺もすきにさせてもらうからな」

「はぁい」



了解は取り付けた。

否やはきいてやらぬ。

うわの空のお前がわるい。



そっと後ろから近付いて、夜着の合わせ目から指を滑り込ませた。

びくり、と猫はからだを揺らす。

「こ、絳攸さま!」

慌てて書物を置こうとするのをやんわりと押し止めて、指を奥にすすめた。

「や……っ」

またびくり、と震える肩。

「秀麗」

小さく猫を呼んでやると、猫は不安そうな横目でこちらを見る。

「ほら、本が落ちてしまうぞ。しっかり持って。明日までに読まないと」

言いながら、しっとりとした肌触りの乳房に指を這わせた。

「は……ん……っ」

「こら、ちゃんと読めよ」

まんなかの、ぷっくりと起き上がった部分をぎゅうとつねってやると、猫のからだはおかしなくらいに跳ね上がる。

「やぁ…っ、こ、ゆうさま…っ」

みゃあみゃあと可愛らしいこえであげる抗議なんて、俺の不埒な指を止める何の術にもならない。




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