化学≒魔術の法則

□第二章 そうして化学は進歩する
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夜。時折走る車の音しか聴こえない学校に、足音を殺して忍び込む一つの影があった。
「へ…へへっ。今時セキュリティーの甘い学校だな。お陰で仕事がしやすいぜ」
小さく呟いて窓から浸入を果たす。たと…とリノウムの床に足音が反響した。
「…化学室か何かか? …まぁ良い。――おっと」
どうやら此処には金目の物がないと判断し、歩き出そうとした瞬間、男の腕が棚にぶつかった。ガチャン…とガラスが高い音を響かせる。一瞬、割れたか? と男は息を詰まらせたが、直ぐに「まぁ良い」と思い直した。
 どうせ盗める物を盗んだら直ぐに退散するのだ。ガラスの一つや二つ割れた所で支障はない。

――そして夜の学校には男の足音だけが木霊する。
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