化学≒魔術の法則

□第一章 それはパラケルススの所業
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類は友を呼ぶ―――なんて言うが、俺は信じない。絶対に!


「ふぁああぁ…」
大あくび一つ。隣の席の佐古が苦笑したが知ったこっちゃない。
 ――ってなわけで。
 眠い。すんげー眠い。どんぐらいかってぇと今バイオテロみたいなもんが起きても寝てられるくらいに眠い。
涙目ちらりと辺りを見ると、他の奴らも眠そうに先生の話を聞いている。
馬鹿め、どうせ眠いのなら寝てしまえば良いのだ――そう心の呟いてほくそ笑みながら俺は静かに机に突っ伏した。……幸せだ。
春の日差しが俺をぽかぽかと包んでくれる。うむ、これは『寝ろ』と神が言っているのだよ。むにゃ…。
「……寝るなああああぁ!」
どこかで、ひゅっガツンッ! と音が聞こえたな、と思った時には俺の頭に衝撃が走っていた――ってか
「いっ…てえぇ!」
誰だ? 俺の安眠を邪魔した奴はっ!
「…さぞかし私の授業は退屈のようだね? 神楽悠樹君」
カッカッとハイヒール音を響かせて近付いてきたのは、どことなくつり上がった目をしたスーツ姿の女性だった。見るからに怒りの形相だ……が
「なんスか? キツネ先生」
刹那、ばしっ! と手にしていた教科書で頭を叩かれた。ぷ…と辺りから失笑が洩れる。おのれ…。
「――私の名前は木月だっ!」
眉間にしわを寄せてキツネ先生が喚いた。怒りで吊り目がさらに狐みたいになっている。…やっぱキツネじゃん。
「聴いているのかっ?」
手で丸めた教科書を威圧的に構えている先生に俺は愛想良く答えた。
「もちろんスよ、キツネ先生……ぁ」
「………神楽ぁ」
「いっいや、今のは本気で間違えてっわざとじゃぁ……っ」
 ばしっ!
さっきよりも強い音が教室に響いた。
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