黒い本

□犬と主
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大崩壊で城は崩れた
コレクションも、友人も、教育係も、使用人の息子とその親も、城にいた全員、父も、母も。
みんな、みーんな。

朧気で良く覚えていないけれど、確かに全てを失った。
俺は瓦礫の中で赤い目を光らせたまま立ち尽くす。
それは端から見ればきっと恐ろしい光景だったろうな。

幼稚に思い描いてきた、永遠という夢。
それを自分は手に入れて、変わりに全ては無くなった。
これが永遠?
いや!違う!違う!自分だけじゃ意味なんてないんだ!こんな虚無感望んじゃ居ない!!

隠し部屋があった跡地で俺は跪く
夏なら寒くならないか、だの、冬なら暑くならないか、だの
そんな子供の我が儘のような理屈の夢を深く深く呪ったものさ

このまま何も起きなけりゃ、死体を弄んだ事をこのガキも反省出来たろうよ。
けれどまだ、黒い夢は終わりを見せるつもりはなかったらしい。生命を弄ぶ事を続けさせたい様だ

後ろからタシタシと近寄る足音。
漂う腐臭。

「オ腹ヘッタ!何カ頂戴!」

その日から、犬と主の旅が始まる。



end
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