黒い本

□ありふれた日々
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彼方此方から響く爆発音、悲鳴、風に乗って漂う死臭…

紅色に染まった戦場で、積み重ねられた屍に座り込んでいた青年は、口元を僅かに歪めて笑う
その笑みは自らの勝利を確信してのものだろうか

暫くして遠方から、偵察に向かわせていた彼の使い魔が帰ってきた。
それは姿こそ犬のようだが、体のあちこちが腐敗し骨肉が剥き出しになった状態で動いている不死の眷属だ。
屍の犬は青年の元へと尻尾を振って近寄り、ちょこんと座り込むと
「全滅!全滅!ミンチミタイニミーンナバラバラ!」と自らが見てきたことを報告する。
「そうか、ご苦労だった」
青年は犬の頭を優しく撫で労いの言葉をかける。そしてその使い魔が最も言って欲しいであろう言葉を続けた

「“食っていいぞ”」

それを聞くが早いか屍犬は元来た方角へ大喜びで駆けていった。
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