中編

□7回目
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「たまたま 巻き込まれたんですよ」


総悟が 言った詞


確かに巻き込まれた
襲われたのもたまたま

でも、


何だか総悟が私と居た事実を書き消してしまったような そんな気がして



あの後 何か地味な人に家まで送ってもらってから 私は総悟に会っていない

仕事先の茶屋にも総悟は顔を出さなくなった



『嫌われちゃった かな…』


思わず口から零れたその言葉に ツキンと胸が痛んだ

私、総悟に何かしたかな?

考えても答えは出てこない


心に靄がかかったような今の状況が嫌で じっとしているのが苦しくて かなり早いが仕事のために家を飛び出した




思った通り 仕事場には時間よりも早く着いてしまったが 街で時間を潰す気にもなれなかったので お店を手伝うことにした


店主のおばちゃんは休んでいて良いと言ってくれたけど 今まで仕事中でも 総悟が来ると 遊びに行ってしまっていたので その分を少しでも埋められたら と無理を言って店に出させてもらった


……考えてみたら私、
いつも総悟と一緒に居たんだ


いつもお店に寄ってくれて

私はそれを当たり前だと思っていて

総悟が居るのが当たり前だと思ってたけど



『当たり前じゃ…ないよね』



何勘違いしてたんだろう


そもそも地球に来た目的は 総悟と遊ぶ事じゃない

もっと 大切な事だもの



そう自分に言い聞かせても 大切な何かを失ってしまったように ぽっかりと空いた穴は埋まってはくれない


たまっていた物を吐き出すようにため息をついて 濡らした布巾で拭いていたテーブルから視線をあげると亜夢はそのまま硬直してしまった


視界に入ったのは 沖田総悟その人と万事屋を営む男だった




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