中編

□9回目
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「泣いてんじゃねーよ アイツがこんな事で死ぬわけねーだろ」


そう言う土方の表情は曇っていて 不安を隠しきれていない



『……私が行く』


「あ?」



亜夢は料亭に向かって歩き出し バケツで必死に消化活動をしている隊士達に言った


『水 少し分けて下さい』


「え…?うわっ!!」



隊士達の返事を聞く前にバケツの水は次々に宙に浮き 亜夢の体を取り巻いていく


「君!!何する気だ!?」



『…総悟を助けに行くの』


慌てて駆け寄って来た近藤に亜夢は真剣な眼差しでそう告げると 近藤はそれを聞いて顔を真っ青にした



「駄目だ!!君が行く必要なんてない 命の保証もないんだぞ!?」


近藤の必死の説得を聞き しばらく沈黙してから 亜夢はにこりと微笑んだ



『大丈夫 私は天人だから簡単には死なない』


そして走りだし 炎の中へと飛び込んでいった



「亜夢ちゃァァァん!!」


近藤の叫び声に返事はなかった
耳に入って来るのはパチパチと木の焼ける音だけだ



「ったく…どいつもこいつも無茶しやがって…」


土方は小さく舌打ちをし 炎に包まれた料亭を睨み付ける



その場にいた全ての人間が一人の少女のとった行動に動きを止めてしまった瞬間だった



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