中編

□9回目
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……………


『あそこだ!!』


上空からでもよくわかる 火が立ち上っている料亭 あそこが真選組が言っていたテロ現場だ
自分を支えている水が蒸発するのが早くなっている 亜夢はスピードを上げ目的地に急いだ



「くそっ火消しはまだなのか!?」


「今向かっているとの事です!!」



真っ赤の炎の周りに黒い服を身に纏った集団がまばらに見られる
切羽詰まった会話が聞こえる 建物の入り口と思われる所へ降り立った



『ゴリさん!!』


「君は!!なぜ来たんだ?危ないから離れてなさい」


近くに近藤の姿を見つけた亜夢はそちらに駆け寄った
辺りを見回すが目的の人物の姿が見当たらない



『総悟はどこにいるの?』


「…………」


黙りこくってしまった近藤の様子をただただ不思議そうに見つめていた亜夢に近藤の代わりに説明をしたのは土方だった



「総悟は料亭の中だ ガキの救出に向かってまだ帰ってきてない」


『……え』


「まだ火消しが到着していなくてな このままだとアイツは脱出できなくなる」


『そんな…!!』


土方の言葉に亜夢は目を見開き口元を両手で覆う
一瞬 人々の声も料亭が焼ける音も何も耳に入って来なくなった


『…総悟が この中に?』


「いつも隊務をサボるような奴だが今日ばかりは偉く働き者でな テメーの心掻き乱す何かを振り払いてェかのように見えたんだが まさかここまで無茶しやがるたァ…」


『………』



沖田の心を掻き乱す何か
心当たりないはずがない

―――私のせいだ
私が総悟にあんなこと言うから
総悟を困らせたんだ


絶望は涙へと変わり その涙は次第に決意へと変わっていく



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