中編

□9回目
3ページ/6ページ




案の定逃げ遅れた一般市民が数名いて 店内に備え付けてあった消火器で道を作りながら外へと避難させた

外へと脱出するとすでに真選組の応援が到着していて 土方が歩み寄ってきた



「無事だったか総悟 ご苦労だったな」


「全くでさァ 追いかけてたヤマにテロ起こさせるなんざ何やってんだ土方コノヤロー」


「フン そんだけ元気たァ心配して損したぜ…にしても今日はえらく働き者だな総悟」


「黙れ土方 お前には関係ねーだろ」


何となく 自分でも思っていた事を指摘した土方に すべてを見透かされたような気がして胸くそ悪い

小さく舌打ちをして土方から目を反らした先に こちらに向かって走ってくる一人の女が目に入った
その顔色の悪さから ただ事ではないことが疑える



「助けてください!!まだ中に子供が!!」


「何っ!?」


取り乱したその女の言葉に 炎に包まれた料亭を振り返る


「あの子 トイレに行くっていったきり…てっきり逃げたと思ってたのに!!」



入り口は辛うじて焼け落ちていない 助けにいくなら今が最後のチャンスだ



『じゃあ帰るよ 帰ればいいんでしょ!』



一瞬 亜夢の顔が頭に浮かんで消えた


自分から突き放したはずなのに 目を閉じればアイツが俺の頭を支配する
やはり俺は亜夢に依存しているらしい

それなのに 傷つけた


そんな自分に対して嘲笑を浮かべ 頭に焼き付いた亜夢の泣き顔をかき消すように 料亭に向かって走り出した



「総悟!!」


「無茶だ!!戻れェェ!!」


土方さんと近藤さんの制止の叫び声が聞こえたが 今の俺は頭がおかしいらしく ブレーキがきかない

そのまま火の中へと飛び込んだ


「総悟ォォォ!!」




近藤達が助けに行こうと入り口まで駆けつけた直後 入り口はついに焼け落ちてしまい 中に入れなくなった



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ