中編

□7回目
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いやに響く亜夢の声に沖田は苛立ちを覚えた


アイツは何もわかってねェ
本当の身の危険ってのをわかってねェ

何で俺がお前を相手にしようとしないか わかってねェ



「だから……!!」


次々に生み出される負の感情を抑えきれなくなって 亜夢にぶつけてしまおうと振り返ったが 亜夢を見た瞬間言葉を失ってしまった


亜夢の顔が悲しみで歪んでいたから
今にもその瞳から涙が零れてしまいそうだ

腕には先程の転倒でかすり傷ができていて 血が滲んでいる



"傷つけた"


その四文字が頭の中でリピートされる


小さく舌打ちをすると ゆっくりと亜夢の方へ歩を進め ポケットからたまたま持っていた絆創膏を取り出すと 亜夢の方へ投げ捨てた



「ケガしたとこ…ソイツ貼っときなせェ」


『総…』



「俺は人間でお前は天人
俺は浪士しょっぴく人殺しでお前はパンピー
…俺とお前じゃ立場が違いすぎるんでィ 俺ァお前みたいな奴に構ってる暇は生憎ねーんでね わかったら二度と俺に近づくんじゃねェ」



亜夢に言葉を発する暇も与えず 冷たくそう吐き捨てると 踵を返して再び歩き出して行ってしまった



しばらくその背中を唖然と見つめていたが 視界はだんだんと滲んできてあっという間に彼は見えなくなった
終いには涙が地面に落ちた絆創膏を濡らしていた



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