中編

□1回目
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『そーれっとー』




意味のわからない掛け声と共に


飛んだ




マジか…





眼下に広がるのは先程まで登っていたはずの丘




落ちる落ちる!!




そう思っていたら何か柔らかいものに支えられた



それは先程まで丘のふもとを流れていた川の水



キラキラと輝くその水に乗っている(?)のに不思議と体は濡れない




そのまま風をきって進む





『ふぃー気持ちぃー
…で お兄さんはどこに行きたいんだっけ』





「真選組屯所でさァ」




冷静な俺だが あくまで冷静を装っているだけだ


内心ビビりまくってて 女の手を掴むのに必死なのだ




そんな俺の心情なんて知らずに 女はのんきに『了解ー』と返事をしている





『しんせんぐみとんしょまで導いて』





女がそう言った途端 自分を取り巻いていた水が風に乗ってフワッとある方向へと流れ出した




『よーしスピードアップだ!あ 手ェ離さないでね 落ちるから』





「へいへい」





気の抜けた返事をしつつも 女の手を掴む自分の手に力を込めた




あぁ…変なこと思い出しちまった


ジェットコースターのベルト閉め忘れたときのこと





だが あの時とは違う



不思議と安心できる




風が自分を取り巻く優しい感覚



女の手の温もり




何だかとても心地よかった



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