中編

□1回目
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「こんくれーなんともねーやい…って何やってんだお前」




女は俺に近づくと 頬に何かを貼った





『へへっばんそーこー』





嬉しそうな女の手には 絆創膏の箱が



だが あいにく俺ァ目がいいんでね
そのパッケージに印刷された 見本の絆創膏まで見えちまうんでさァ
その ピンクのくまの柄が




「こんなんつけて歩けるか」



ベリッと自分の頬から剥がした絆創膏を 丸めてポイッと捨てた
黄色いウサギが描いてあった




『あぁ!!らぶりーウサコちゃんがァァ!!』





本当コイツうるせー

いちいち叫ぶなっつーの




「じゃあ俺ァ急いでるんで 早く帰らなきゃ恐い上司に切腹させられるんでィ あばよ」






本当はドラマの再放送が見たいだけでィ
昨日いい所で終わっちゃったんでさァ




片手を上げて 今度こそ帰ろうとしたら




『待って下さいィィ!!』




ばっと両手を広げ 通せんぼしてる女に 行く手を阻まれた





本当いいかげんにしろィ

こっちはマジで急いでるんでさァ




あからさまに嫌そうな顔をして立ち止まると女は言った





『ならば 私が連れてってあげます!人間が歩くより多分速いですよ さぁ言ってごらんなさい 目的地を言ってごらんなさい!!』




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