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□迷子の迷子の
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君はコドモだ。

「これは困った!」

口ではこう言うが、そんな君は声も表情も至極楽しげだ。

「誰の所為だい誰の」

責められているというのに(もっとも本気ではないが、)悪びれる様子もなくくすくすと喉を転がしている。

「さぁ?」

「僕は久々に江戸に戻ったんだ。君が道に迷ってしまっては元も子も無いじゃないか」

「じゃあちょっと通行人つかまえて屯所までの道聞いて来まs」

「やめたまえ真選組の信用に関わる」

こうやって後先考えないところも、

「むー」

いい大人がくちびる突き出して頬を膨らましてむくれる所も、

「…本当に君はコドモだな」

「そんなコドモに案内を任せたのは何処の誰ですかぁ」

「僕だよ悪かった」

「伊東さん笑ってます。反省の色が見えません!」

…君ほどではないと思うが。

「悪かったって言ってるだろう」

「じゃぁあっちのお茶屋さんでお団子を奢って下さい」

弁解すれば、したり顔で突き当たりの茶屋を指差す君。


「もしかしてわざと迷ったのかい?」

「まさか!大真面目に迷子になりました!」


「それもどうかと思うけd」

「おばちゃぁーん!!お団子ふたつね!!」

思わず溜め息が漏れた。
よくこれで今まで育って真選組で生きてきたものだ。

そしていつの間にか僕まで団子を食べる事になっている。


「ホラ、頭に糖分入れたら道分かるかもしれませんよー」

さも当然のように笑顔で言い放つ君になにも言い返せなくて、ちょうど出てきた団子を口に運んだ。

食べ終わると同時に立ち上がった君は、未だ座ったままの僕の低い頭を無造作に撫で回し言った。

「ちょっとその辺歩き回って見て来ますんで。ちょっとの間、ここでまっててください」


にこりと笑んで、駆け出す君の細い腕を、

「、待っ、!」

咄嗟に掴んだ。


「なんですか?」

聞きたいのはこっちだった。

「…あ、いや、べつに」

自分自身返答に困っていると、君はまた一段と楽しげに溜め息をついて、言った。

「………いやはやアレですね」

「は?」


「おいてけぼりが寂しいなんて、伊東さんもたいがいコドモですね」


僕を見下ろす君は女性らしい落ち着いた眼差しをしていた。


「…〜〜っっ!!そ、んなっ」

「まーまーそういうことならいっしょに行きましょうかぁアハハ」


まいごのまいごのこねこちゃん、なんて、まるで本当にコドモと帰るように歌う君の手は、
僕の顔くらい熱い子供体温だった。



迷子の迷子のお巡りさん

(困ってしまってわんわんわわーん♪)
(本気で焦ってくれ、日が暮れる)





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付き合う付き合わないの境目の無い曖昧ならぶらぶが好きです
拍手してくださったお嬢様方ありがとうございました!


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