命短し旅せよ乙女!

□第四話 快走、回想、回送
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――半日足らずで、何と無くながら馴染みだした自分に感動した昼下がりであった。

もう大概のハプニングには動じない自信がある。


…八割方はあのサディスティック星の王子の所為で、だけど――





思い返せば、ボコられたっぽい可哀相なビジュアルの山崎さんが部屋に立ち寄った30分前の事である。

朝っぱらからデンジャラスな組織に身を置く羽目になり、
(恐らくお目付け役にされたのであろう)山崎さんのお隣りの部屋を宛てがわれたついでにお昼ご飯を運んで貰ったりして、
ゆったりお茶をすすって考えたい気分だった。

のに。


突然開かれた障子戸と、ちゃぶ台に落ちた人影。

「ここは空き部屋の筈だろィ…なぁアンタ、誰ですかィ?」

聞きたかったようなそうでないような…、というかこの時は聞きたくなかった。

警戒心的なアレが剥き出しというか……、剥き出しです。

顔に出ないよう頑張りつつ、恐る恐る見上げれば、言わずと知れた栗色のサラサラヘアが眩しいベビーフェイスの青年。

「…まずは貴方から名乗るのがセオリーってモンでしょう?」

あぁ私の馬鹿なに喧嘩売ってんの。
なに失礼ぶちかましてんの。

何言われるんだろ、むしろ何されるんだろう。
せっかく車に当たって生きてるのに、こんな下らない事で死にたくないぞ…!

「――真選組一番隊隊長…沖田、総悟。」

「………、へぇ。」

意外にも素直に答えてくれた事に言葉に詰まる。

「オイ、名乗ってやったんだからアンタも正体明かしなせェ」

「…あぁ、はい、私は…蓮見千早です」

「千早、ねェ。で、なんでアンタはこの部屋にいるんでィ」

「えー、ぶっちゃけ私が聞きたいくらいなんですけどね」

同じ真選組の人間だけど、事故られた話はすべきなんだろうか。

「…は?」

怪訝そうに眉をしかめた沖田、…さん?(と呼んでみるけれど)…自分は呼び捨てにされたのが多少ひっかかる。

「まぁ結論から言えば、ここに居候ですかね?」

「冗談よしなせェ、そんな事あの土方アンチクショーが許す訳ねぇだろィ」

「しかしびっくりする所は、そのアンチクショーが言ったっつー事なんですけどね」

表情の起伏があまりない彼も、ぎょっとしたように目を見開いた。

私だってびっくりしたさ。
現在進行形でびっくりしっぱなしだよ。


「なんなら本人に確かめたらどうです?それすら嫌でなければ」

「いや…めんどいからやめときまさァ。」

「だろうと思いましたよ」

だって漫画やアニメで見てるだけでもヒシヒシ伝わるもの

…と。つい、それが大前提として返事してしまった事を後悔した頃には、もとから無表情気味の沖田さんの顔が冷たく固まっていた。

「――何故?」

「……………っ」

言い訳を考える暇も無く、鋭く平坦な声音で更に問い詰められる。


「…なぁ?なんでだ?」


……これは、多分、死亡フラグ

笑い所ではないよ、と念押しさせてくれ





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